JASVブログ第276回

こんにちは、ご無沙汰しております。

あかばね動物クリニックの水上です。


このブログを書いているのは2019年8月10日なのですが、5月19日に下書きを書いていました。見直すと、内容を大幅に書き換えなければならなくなっていました。

『2019年5月19日現在、豚コレラは日本国内で23例の発生が報告されています。今のところ、岐阜県と愛知県に限局していますが、野生イノシシの発生報告は徐々に拡大しているように見えます。養豚場での発生も急拡大はしていませんが、制限が解除される頃になると次の発生が報告される、制限区域内では気が休まる時はありません。

さて、危機的状況になると人間は不安になり、いろいろなものにすがりたくなります。また信ぴょう性の有無にかかわらず、琴線に触れたものを強く信じることが多くなります。例えば、東日本震災や熊本地震の時にSNSを通じて様々なデマが流されました。普段であれば見向きもしない情報であっても、異常事態であればどんな話であっても鵜呑みにしてしまう人が出てきます。そのため、混乱に拍車をかけてしまいます。

豚コレラでも近いことは起こりえます。憶測が憶測を呼び、嘘か真かわからない情報が増えています。』(下書きママ)


8月10日現在、36症例目まで豚コレラの発生が確認されており、野生イノシシでは岐阜や愛知以外に三重・福井・富山・長野と拡大しました。長期間に及んだ田原市での制限区域は終息しましたが、豚コレラ陽性イノシシが多発している地域はいまだ苦境に立たされています。

また、信ぴょう性の低い情報は少なくなりましたが、情報源が不確かなものはあります。それだけ今回の豚コレラについて分からないことが未だに多く、状況が好転しないことも相まって不安が募っているためだと推察されます。

中部圏内では、明日、何が起きるのか分からないのが現状です。ただ、農場毎に防疫レベルを上げなければならないことだけは確かです。私自身もできるかぎりのサポートを尽くします。

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JASVブログ第275回

みなさんこんにちは!()サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!

今回は、先日のJASV年次大会で発表した「農場HACCPJGAPの取組事例」について概要を話したいと思います。

 まずHACCPとは、Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字をとったものです。農場HACCPは生産される畜産物の安全性の確保、及び生産性の向上を図るためのもので、危害要因の分析・評価(HA)を行い、個々の農場の状況に応じた一般的衛生管理プログラムや必須管理点(CCP)を決め、適切な飼養衛生管理に取組むものです。それに対してJGAPは、日本および東アジア・東南アジアの農場に向けて、安全な農畜産物の生産、環境に配慮した農業、農業生産者の安全と人権の尊重、適切な販売管理を実現するための手法として開発されたものです。これらの認証取得に生産者とともに取り組んでいる中で感じた課題と、養豚管理獣医師が構築支援する有効性について話します。

まず生産者が農場HACCPJGAPに取り組むことによって、第三者認証により畜産物の安全性が担保されることや、農場管理の向上、従業員のモチベーション向上、生産成績の改善が得られます。しかし農場HACCPJGAP構築時に現場から挙げられる一般的課題としては、①書類作成に時間がかかる割に、効果が分からない。②書類を作るだけで終わってしまう。③書類と現場が乖離してしまう。④書類を作る目的が分からない。⑤スタッフに浸透しない。⑥ゴールが見えない。などの意見が聞こえており、農場HACCPJGAPに取り組む際の障害になっていると感じます。①から④は指導員が養豚現場を良く知らないことから起こります。農場HACCP認証基準やJGAP適合基準を網羅するように書類作成することは指導員研修に参加すれば出来ることですが、それを生産者が実際の作業に活かせる書類にするためには、養豚場での指導経験や、養豚場内での作業経験が必要になります。⑤や⑥に関しても指導員が養豚場を良く知らないことから起こりますが、それに加えて、指導員と生産者との綿密なコミュニケーションが取れていないことや、構築計画自体に無理があることによって起こります。現場スタッフの1日作業量や能力、そしてモチベーションを把握せずに構築計画を組んでしまうと、「計画倒れ」に陥ってしまう可能性が高くなります。

養豚場が農場HACCPJGAPの認証を取得するに当たり、その養豚場を良く知る養豚管理獣医師が構築指導を行うことが重要だと感じます。養豚管理獣医師は養豚場内部の生産工程への理解も深く、改善指導も行っているため、農場HACCP認証基準、JGAP適合基準を満たしながら、生産改善のアドバイスが出来ます。さらに養豚管理獣医師は、構築に関わる従業員の1日作業量と能力についても把握しているため、「計画倒れ」に陥る可能性を減らすことが出来ます。

農場の工程や作業、さらには従業員の能力まで把握している養豚獣医師が関わることで、書類作成などの構築に関わる努力を有効に農場運営に活かし、さらにメリット(利益)に変えることが出来るでしょう。     


(有)サミットベテリナリーサービス

渡部 佑悟

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JASVブログ第274回

皆さま、ご無沙汰しております。

サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。


ご挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

ついに平成が終わり、新しい元号を迎えるカウントダウンが始まりました。

平成生まれの私としては、自慢できるものがなくなってしまいます笑


さて、今回は昨年11月に2週間にわたり行ってきましたオランダでの研修についてお話したいと思います。

1週目はオランダの養豚事情を始め、飼料について、遺伝改良についてなどをマンツーマンでご指導いただきました。また、オランダの開業獣医師のクリニックへも連れて行っていただきました。

2週目は、日本養豚事業協同組合のツアーに合流し、農場訪問をメインに過ごしました。その中で特に印象的だったのが、少ない人数でいかに効率的に働くかということが重要視されている点でした。

日本では一貫農場の場合、母豚50頭あたりを1人で管理するのが平均になっていますが、オランダの農場の中には母豚500頭の一貫農場を1.5人で管理している農場もありました(ただし、輸送関係は外部に依頼しているため、基本的には豚の管理のみを行っています)。


オランダでこのように少ない人数で農場管理をしている背景には、豚価が安く人件費が高いため、そもそも人手をかけられないということが挙げられます。そういった背景の中、少ない人数での管理を実現できている理由、日本との違いについて、以下のように感じました。


まず、オランダでは日本と異なり、多くの生産者が同じ供給元の種豚を飼養していますが、その種豚は遺伝改良が進んでおり、繁殖成績が高いことが特徴です。多産系母豚であるため産子数が多いことはもちろんですが、生まれてくる子豚の生時体重が小さ過ぎず揃っている、母豚の泌乳力が高い、乳頭数が多いなど、母豚の特徴に関する遺伝改良の結果、管理の手間が少なくてすむことが挙げられると思います。


その他、豚の移動がしやすい豚舎構造になっていて移動作業が多くないこと、子豚出荷や一貫農場が多く農場のサイトが分かれていないことも挙げられますが、農場サイトを分けなくてもよいのには病気の問題が少ないという特徴があることを考慮しなくてはいけません。


また、日本のように野帳に手書きしたものをエクセルに入力するなどの作業の手間がなく、記録するための端末があり入力したデータはすぐに豚舎内のwifiを使って送れたり、バーコートをスキャンするなど記録システムが整っていました。これにより、手間なく詳細な情報を記録でき、それを管理に活かすことができていました。


より少ない人数で同じ頭数の母豚を管理するためには、単純に人手を減らせばいいというわけではありません。効率よく動ける豚舎、移動の手間の少ない豚舎および農場配置、病気の撲滅やコントロール、必要作業の見直し、そして計数管理・豚舎管理システムの整備が必要だなと感じました。


㈲サミットベテリナリーサービス 数野由布子


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JASVブログ第273回

こんにちは。豊浦獣医科クリニック(TVC)の田村です。

今年の猛暑が明けて、秋一色、地域によっては雪も降る季節となってまいりました。

個人的に一番好きな季節が秋で、暖色に満たされた紅葉の中の散策が毎年の楽しみです。ずっとこの景色が続くといいなと思うのですが、秋というのはアッという間で、気づけばすぐ師走。すぐ年末年始。なんだかさみしくなる季節でもあります。みなさんはどの季節が一番お好きですか?


少し前の話になりますが、一般社団法人 日本養豚協会(JPPA)主催の日本養豚大学校のお手伝いをさせていただく機会をいただいたので、そのご報告をしたいと思います。今までも養豚大学校はJASVの若手獣医師が勉強も兼ねてお手伝いをさせてもらってきましたが、やっと私にもお手伝いと勉強をさせてもらう幸運な機会が巡ってきました。

日本養豚大学校の概要については下記の通りです。


「日本養豚大学校」は第一に、そこに学ぶ者が「養豚産業」の日本の社会における存在意義と責任を十分に理解し、自らの仕事に誇りをもてるような“哲学”の共有をめざして設立し、20139月に開校致しました。”(JPPAホームページより)


今開催で第5回となり、1スクール3日ずつ、5,7,9月の3期に渡り開催されました。

今年のメニューの概要は下記の通りです。

・第1スクールでは養豚人としての心構えや豚のハンドリングや体型管理、種豚や繁殖の基礎知識

・第2スクールでは栄養学やバイオセキュリティ、解剖、豚舎環境制御や糞尿処理などの各論

・第3スクールでは食肉センターや食肉大学校での肉加工について+最終課題

合計で9日間にわたるスクールではかなり濃い内容の講義が盛りだくさんでしたが、みなさん熱心に講義を聞き、質疑応答も活発に行われていたことがとても印象的でした。

募集対象者は就業後半年以上、5年以内の後継者や従業員が優先募集ということで、若手後継者や従業員の方が多く参加されていました。中には10年以上の勤続経験のある方もいて、グループディスカッションではかなりレベルの高い会話が繰り広げられていました。

弊社(TVC)の初級講座の卒業生の方も何名か参加されていて、いくつかの常連農場ではTVC初級講座→養豚大学校という研修ステップがあるようです。

講義の内容もさることながら、他の養豚場で働いている人たちとの情報交換ができる機会であり、毎晩のようにディスカッションの延長戦が繰り広げられており、得た情報を早く持ち帰って試してみたいという気持ちがあふれていて、一緒にいるだけでワクワクしました。私自身もこの気持ちをずっと持ち続けていきたいなと思いました。

卒業生が社長や場長クラスになっているころに私はどうしているかなあと思いつつ、次会う時に恥ずかしくないように、養豚獣医師として精進していきたいと思います。

最後に、このような貴重な機会を与えてくださったフォーラム22(企画運営)の中村節子様、岩田寛史様および一般社団法人日本養豚協会様そして、TVCの業務を抜けだして今回のお手伝いを応援してくれたTVCの皆様にもこの場を借りて改めて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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JASVブログ第272回

皆様こんにちは、(株)ピグレッツの平石です。


暑い夏が過ぎて、過ごしやすい日々となりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。私自身も最近ようやく夏バテから解放されるようなったと思います。


 今年の夏は私の住んでいる東日本も平均気温が平年比+1.7℃となり気象庁の発表によると、1946年の統計開始以降東日本において最も暑かった夏とのことでした。


 今年の夏は例年以上の猛暑とのことで、クーリングパッドやドリップクーラー、送風ダクトで対応しても種付けストールの母豚の食欲不振や死亡、肥育豚の出荷遅れなど多くの問題が認められたように思います。猛暑が過ぎ、上記の問題も徐々に少なくなると思いますが、今年の教訓を活かし今後起こり得るであろう異常気象に対して、少しでも豚が快適だと思える環境を作る努力をしたいと思います。


 また、9月には岐阜県の養豚場において、清浄国である日本で26年ぶりとなる豚コレラの発生が認められました。9月28日には搬出制限区域が、10月9日には移動制限区域の解除が実施されましたが、豚コレラの日本への侵入経路は未だ解明されていません。そこで、早急な豚コレラの侵入経路等の原因解明を願うと共に、引き続き千葉県においても飼養衛生管理の徹底や早期摘発のための監視の強化に万全を尽くしていきたいと思います。


終わりに、今回の豚コレラで被害に遭われた農家の皆様ならびに関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

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JASVブログ第271回

 こんにちは、あかばね動物クリニックの水上です。


 西日本豪雨から約1カ月経ちました。この災害では中四国、九州および北陸の広い範囲で多大な被害が発生し、多くの犠牲をだしました。この豪雨は激甚災害として認定されました。亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

 その後、本州を中心とした連日の猛暑日が続いています。例年より梅雨明けが著しく早く、それにより夏がさらに長引くと推察されます。熱中症で救急搬送された方も多数見えます。農場現場での作業は涼しいところとは限りません。十分な休息とこまめに水分補給をして、無理をしすぎないようにしましょう。


 さて、7月20日に日本養豚開業獣医師協会の活動報告会および記念講演が開催されました。今回の記念公演は広島大学の島田先生による「精子運動性の基礎研究から繁殖技術の開発」。題名の通り、人工授精に深くかかわる内容でした。

研究と言うと現場とは程遠く、対極にあるように感じることさえあります。ですが臨床現場で用いられている技術の多くは、基礎研究の積み重ねから生まれてきたものが多いことも事実です。今回発表された内容は現場に即したものでした。

お話の中には精子の運動性について新しい知見が多数含まれていました。私の中で特に印象に残ったこととしては、精漿に含まれている様々な物質の量によってその後の精子活性に大きな影響を与えるということです。過去の検査では一つの物質を1回ずつ分析しなければならなかったものが、現在では複数の物質を同時に高感度で分析できるようになってきています。

私も大学生の頃、卒業論文のために実験をしていました。過去の研究や現場から結果は推測出来ても、最終的な結果は分らないのが研究です。時間と労力を必要とする実験を繰り返さないとその結果も導き出せません。大学や民間の研究者の方々は、卒業論文とは比べられないほどの、複雑かつ綿密な研究によって新たな技術や商品の開発に寄与しています。

日本の科学研究が失速していると多方面から言われています。それでも養豚の現場的な研究をされている方々は周りに何人もいらっしゃいます。そこから得られた知見が現場で使われるかどうかは、最終的には現場での判断になります。またフィードバックすることで、研究が次のステップへ向かいます。より現場的な技術を求めるのであれば、現場の声を研究および開発へ伝える、意見のキャッチボールをしていきましょう。

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JASVブログ第270回

皆様こんにちは、イデアス・スワインクリニックの早川です。

私がこのブログを前回更新したのは去年の大晦日でした。それから既に半年が過ぎ、一年の折り返し地点を迎えてしまいました。毎度のことながら時の速さにびっくりです。


あっという間に季節が移ろっていく間、大変貴重な体験をしました。過日(今年5月)のことになりますが、イリノイ大学PRRS特別講座と題したJim Lowe先生のワークショップに参加する機会を頂いたのです。と言っても、イリノイまで出かけたのではなく、会場は東京で、このブログの執筆メンバーである若手の先生方をはじめ、国内で様々な立場から養豚に携わる獣医師30余名の1人としての参加でした。

3日間でPRRS対策を学ぶということで、どんなカリキュラムになるのか初めは見当もつきませんでした。始まってみると、これまで自分が学校で学んできたこと、実践経験で意識的あるいは無意識に身に着けてきた全てが、鮮やかに分子のレベルにまでに分解され組み直され、新たに有機的なシステムに体系付けられていくことに衝撃を受けました。


Jim先生は、第一講義「動物衛生学におけるエンジニアリングベースアプローチの適用」で、いきなり獣医師の仕事はシステムエンジニアである、と説かれました。養豚管理獣医師は、養豚場というシステムを理解し、システムがどうしたらうまく機能するのかを明らかにし実践することが仕事である、というのです。

確かに自分が行ってきたのはその通りのことなのですが、自分はSEであると発想したことはありませんでした。実は私の弟はシステムエンジニアであり、仕事の話を聞くと非常に面白く、似ている点があるとは思ってきました。それでも、コンピューターと養豚場(あるいは豚という生物)、両者は全く異なるものだと思ってきました。しかし、実は両者は同じものであり、このトポロジーの原則は「対象をシステムとして捉える」ことに他ならなかったのです。

この考え方で重要なのは、生じてくる事象そのものに注目するのではなく、事象と事象の関係性に目を向けることにあります。近年、医学の領域でもこの考え方のもとに健康や病気が捉え直され、新たな治療アプローチが生み出されています。

今回のお話を聞いて、これまで無意識に、また不完全に使ってきた思考法でしたが、これからは私も意識的に活用して問題解決に役立てようと思いました。


研修では、Jim先生の講義の他、グループワークも用意されており、グループごとに実践的な課題を与えられました。

私のグループは、たまたま若手の養豚管理獣医師ばかりが集まり、wean-to-finish型の農場における高い離乳後事故率を改善するという課題に取り組みました。みんなで様々な考えを出し合い、一つの案にまとめていく作業は大変面白く、刺激的で勉強になりました。


グループワークに限らず、3日間の充実したプログラムを通じて、これまでの枠組みを超えた一種の連帯感を参加者全体で感じることができたのは、何にも勝る財産となりました。

企画・運営の皆様、Jim先生に心より感謝いたします。

この体験を業界に還元できるよう頑張りたいと思います。

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グループワークの様子


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修了証書授与式後、皆さんで

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