JASVブログ第111回

7月25日現在、ようやく口蹄疫については落ち着きが出てまいりました。

言葉には表しようがありませんが、被害にあわれた畜産農家の皆様心からお見舞い申し上げます。これからの復興に向けて畜産関係者一同が一丸となり一日も早い復興をお祈り申し上げます。

また現地にて奮闘された獣医師の先生方、畜産関係者の皆様大変にお疲れ様でした。

私自身は現地に赴くことができませんでした。口蹄疫の被害を食い止めるお手伝いをしたいという気持ちと地元畜産関係者のご意見や自分自身の生活の糧などを考えるとどうしても宮崎に行くという決断はできずに悶々とした日々を過ごしてきました。このことは畜産に関わる多くの獣医師の先生方がそうであったのではないでしょうか。

宮崎県への口蹄疫の義援金の総額が7月20日現在で24億円を超えているのをみると、畜産関係者を除く一般の方々の関心と心配の高さもうかがえます。

 

さて先週カナダのバンクーバーにて、国際養豚獣医学会が開催され世界中の養豚に携わる獣医師が集まり私も今回参加する機会を得ることができました。テーマは疾病関連・繁殖関係・公衆衛生など様々です。昨年行われたアジア養豚獣医学会と大きく異なる点は2つあります。一つは生産者の参加は皆無であり純粋に獣医さんの学会だったことです。もう一つはポスター発表が紙ではなく全てテレビ画面で行われたことです。同時に多くの学会で分厚く、重たい抄録(全ての発表をまとめた冊子)を手渡されるのに今回は「USB」に全ておさまっていました。IPVSの帰りはきっと多くの冊子やパンフレットをもらって帰るのだろうと思っていましたが、電子化が進んでいた今学会ではほとんど荷物が増えなったことに驚きました。

バンクーバーという町は大変に過ごしやすい街です。先週の気温は22~23度、湿度は60~70%で快適です。冬季オリンピックが開催されましたが冬は街の中心街は積雪がないそうです。もともとが移住してきた人々によってつくられた町なので実に多くの人種が住んでおります。日本人の留学生や居住者も多くいます。街全体的に親切というかフレンドリーな人が多い気がしました。交通手段もバス・電車・タクシーがそろっており治安も良いですので大変移動もしやすいです。料理はアメリカに近いので大雑把な味付けかと思っていたら、予想に反してこれが実に美味しいんです。バンクーバーに日本人や中国人を含むアジアの人が多いからでしょうか、地元のレストランに行っても味付けは日本のそれに匹敵する程のものでした。シーフードが一番のお勧め料理でしたがあらゆる国の料理を堪能することができます。また寿司やラーメンを含む日本料理も多く欧米料理はちょっとと感じる方でも平気です。・・・と簡単にバンクーバーの街を紹介しました。きっと次のブログで一緒に参加した石関先生が学会内容について報告してくれると思いますので、石関先生に少しプレッシャーを与えつつこれで終わりたいと思います。

 

栃木県  フォーピッグ那須  福山聡

 

 

 

 

 

JASVブログ第110回

 こんにちは 豊浦獣医科クリニックの古市朋大です。
 7月1日です。クリニックの周りの紫陽花も色とりどりに咲き誇っています。
 

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 口蹄疫は、アジア、中東、アフリカ、南米を中心に毎年世界各地で発生している病気です。
 牛や豚など偶蹄類のみが感染し、人間には感染しません。
 国内では家畜伝染病予防法に基づき、口蹄疫に感染した家畜の肉や牛乳が市場に流通することはありません。万が一、感染家畜の肉や牛乳を食べても摂取しても人体には影響はありません。
 この病気が家畜に感染すると成長や泌乳が著しく悪くなるため、お肉と牛乳の生産がストップしてしまいます。しかし、最も怖いのは感染力が著しく強いことで、このため国家規模で畜産業に壊滅的な打撃を与える伝染病です。
 6月30日に宮崎県は感染家畜(疑い含む)とワクチン接種した家畜の殺処分と埋却が終了したと発表しました。合計27万6000頭も処分されました。しかし、ウイルスが存在しなくなったわけではないので、まだ予断を許さない状況は変わり有りません。ここからが最終的な詰めの段階です。
 これから口蹄疫の終息に一番重要な清浄性確認検査が進んでいき、合わせて再発防止に向け疫学調査が進んでいきます。
 生産者の方々は今まで継続してきた農場防疫(バイオセキュリティー)の手を緩めないでほしいです。疾病は口蹄疫だけではないので、構築した農場バイオセキュリティーは今後も継続していきましょう。

 口蹄疫は目に見えない小さなウイルスが動物に感染し、牛で7日間、豚で10日間の潜伏期間を経て発症します。
 口蹄疫ウイルスはとても感染力が強いものです。牛や豚などの家畜がウイルスを運ぶだけでなく、農場を行き来する人の衣服と靴、車両、物品にウイルスが付着して、多くの農場へ感染を広げていきました。野生動物やネズミなども感染を広げるものになります。こうして感染が拡大し、地域で感染した農場数、動物の数が増えるとその範囲は空気感染も起こしました。
 ウイルスなので抗生物質も効かず、口蹄疫ワクチンは感染を防ぐことはできず、発病を抑制することによりウイルスの排泄を減らすだけのものでした。
 このように、口蹄疫ウイルスは非常に伝播力が強いので、感染の拡大を防ぐためには速やかに殺処分などの防疫措置を行います。
 今回の口蹄疫は、発生当初から様々な問題点があり被害が拡大してしまいました。
 問題点の一つには情報の不足と、口蹄疫という病気に対する知識の不足があったと指摘されています。
 病気の原因、目に見えない微生物の知識を持つことが、病気を防ぐうえで最も重要な項目です。
 現在の畜産はグローバル化が進み、多くの関係者が広い地域で、高い頻度で関わっています。生産者、獣医師、畜産関係者はもちろんのこと、行政、一般の皆様も病気にたいする知識をもってもらうことが、日本の家畜の病気を防ぐことと思います。

 6月26日に麻布大学で市民の方を主な対象として緊急公開講座「口蹄疫を正しく知ろう」が開かれ、私も聴講する機会に恵まれました。
 
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 並河和彦先生(伝染病学研究室)、福安嗣昭先生(衛生学第二研究室)、飯川俊郎先生(神奈川県保健福祉局)の講演に加えて、JASVの依頼により現地の宮崎で防疫措置を行った新井佐知子先生(内科第一研究室)、宮崎市で養豚を営む農家をご実家とした日高佑太郎さん(獣医学科6年次)の、ご自身の経験された生のお話を聞くことができました。
 多くの一般の皆様の参加があり、意見交換など大変実りのある講座でした。
 
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 口蹄疫により関係者の苦悩は計り知れないものとなっていますが、一般の皆様に正しく口蹄疫という病気を知ってもらい正しい理解の上に立って、力強く被災地宮崎への支援をすることが大事だと思います。また、正しい情報を伝えることこそが獣医師の仕事の一つだと感じました。

 

 有限会社 豊浦獣医科クリニック
 古市 朋大