JASVブログ第199回
JASVブログをご覧の皆様こんにちは。
エスエムシー株式会社の谷口笑子です。
3月中旬のブログにはスノボの話題を挙げたところでしたが、2ヶ月と経たないうちに桜も散って、暖かさを感じられるようになってきました。
今回は191回のブログで触れました、初級養豚講座の様子をご報告させていただこうかな…と考えていたのですが、今回は防疫の話をテーマにしようと思います。
弊社には、抗体検査や細菌検査、PCR検査、加工品検査など九州から北海道まで日本全国から検査依頼検体が送られてきています。検体として送られてくるものは死亡した仔豚やその臓器、便や血液など様々(病原性の有無は未知の状態)です。このような検体を受け入れるために、検査室および事務室から独立した専用の受付室を設けています。送られてきた検体は外側を消毒し、そして、白衣・帽子・マスク・手袋着用のもと消毒が終わったものから、受付室に運び入れ、それぞれの依頼に応じて仕分けを行い、各検査室に運び検査を進めます。臓器や仔豚が送られてきた場合は別棟の解剖室で解剖を行います。検査に使用した器具や送られてきた検体の入れ物のように検体に触れたものは、必ず消毒・滅菌などそれぞれに適した処理を行い、廃棄し、外に漏れる事がないようにしています。
検体だけでなく、人や車も病原体を運ぶ可能性があります。この経路を遮断するための対策として、玄関には消毒液が浸み込んだマットを置いており、社員はもちろん訪問者の靴が必然的に消毒されるようにしています。(一般の方向けに注意書きも貼っています)また、弊社は車での通勤が主なのですが、車の下車から玄関までの敷地内を歩くための「通勤用の靴」を使用しています。様々なところに出かけたり、歩いたりした靴の裏や車のペダルなどは知らないうちに病原体がくっついてしまっている可能性があるからです。
左から、受付室内での仕分けの様子、通勤用の靴、玄関入口と注意書き
社内では制服を使用しており、出勤したらこれに着替え、各検査室ではこの制服の上に検査室専用の白衣・帽子を着用します。さらに必要に応じて、マスク・手袋を着用しています。このマスク・手袋は使い捨てのものを使用し、検体間やその他のコンタミを防ぎます。また、検査室とその他の部屋では、靴を分けています。色分けすることで間違えがなく、出入り口にスノコを置くことで履き替えを意識し、替え忘れを防ぎます。各部屋の出入り口には、目につき易くすぐ使用できる場所に手指消毒用のスプレーをおき、こまめに手指消毒できるようにしています。
検査時の白衣と帽子
防疫で重要なことは、①持ち込まないこと②増やさないこと③持ち出さないことです。
熊本で鳥インフルエンザの発生が報告されていましたが、拡がることなく終息したようです。現在、他の先生方のコメントにあるように、養豚界ではPED(豚流行性下痢)が日本全国で拡がりを見せています。PEDは経口感染ですが、様々なものからの伝播が示唆されています。PEDだけではなく、既知・未知の病原体を防ぐためにも日頃から防疫の徹底が重要だと思います。上記は弊社で行っている防疫のごく一部ですが,全員が同じように実行できるように防疫マニュアルを作り、実行しているのはもちろん、訪問者のような社外の人に対しても注意を払っています。たとえ、マニュアルに沿っていたとしても、慣れてくるにつれ、出来ているものだと意識が薄れていくことがあります。この機会に全員で「意識・継続・実行」を再度見直し、向上させていきたいと思います。