JASVブログ第201回

こんにちは。豊浦獣医科クリニックの古川誠です。

6月に入り関東も梅雨入りした途端各地で信じられないような雨が降ったと思えば、次の日には30度を越すような真夏日になるなど激しい気候の変化に体調をコントロールするのが大変な毎日かと思います。ただでさえ蒸し暑い豚舎の中の作業ではこまめに水分を取って脱水状態にならないよう気を付けましょう。

 

昨年から養豚界を騒がしているPED(豚流行性下痢)に関して、各地での防疫強化対策はもちろんですが、気温が上がるにつれて各地から毎日のように届いていた発生報告の数が減少傾向にあるように感じます。一般的にPEDウイルスは空気が乾燥する冬には感染拡大しやすいが逆に暑い季節に弱いと云われていました。現場でも5月がひとつの山場という見方も強く、当初の見立てがある程度当たったように思えます。ただアメリカでは気温の高低に関わらず年間を通じて発生が報告され甚大な被害が出ていますし、前回の森野先生の投稿にもありますように、千葉などの養豚場が密集する地域では未だに感染拡大が継続していて予断を許さない状況にあることは間違いありません。

 

不幸にもPEDウイルスの侵入を許してしまった農場では生まれてくる子豚が成す術なく次々と死亡し、経営的なダメージだけでなく虚しさや悲しみなど精神的なダメージも深いと思われます。ウイルスの侵入を許していない農場もいつか自分の農場にウイルスが入ってくるかもと神経を尖らす毎日を過ごしていることでしょう。

しかし生きるため、生活するためにはいつまでもネガティブな気持ちでいる訳にはいきません。陽性農場も陰性農場もなんとか気持ちを切り替えて利益を確保するよう知恵を絞らなくてはいけません。

苦しい状況の中どう立ち向かえばいいのか?

ひとつのヒントになる記事が先月BloomnbergBusinessweekに掲載され目を引きました。

タイトルは、

A Short-Term Solution for Deadly Pig Virus: Raise Fatter Hogs

(死を招くウイルスに対する短期的な対処法:豚を大きく育てる)

記事を要約すると、PEDによって大打撃を受けたアメリカの養豚界だがアメリカ社会の豚肉やベーコンに対する需要は大きい。その需要に応えるため、そして自分たちの農場の利益を確保するために養豚家は通常よりも飼育期間12週を長くすることで出荷体重を昨年比から34%大きくし出荷数の減少を補てんし利益を確保している傾向が見られたという内容(下記グラフ参照)。

 

相場の流れをよく読んでどの体重で出荷すれば一番儲かるのか。出荷直前の見極めで儲けが大きく変わってきます。現在(20146月中旬)の相場なら、大きく出した方がより多くの利益を得ることができます(今回のような緊急時には期間限定、例えば1年限定で上物格付けの上限を引き上げるというような特別処置があったらいいなと思うのですが…(^_^;))。

体重測定はめんどくさいから、大変だからやっていないという養豚家も多いかと思います。しかしそれではいつのまにか損をしている可能性があります。今回ご紹介したアメリカの記事にあるように現状を冷静に分析し、ピンチをチャンスに変えて逆境でも生き残れるようなしたたかさを日本の養豚家も身に着けてほしいと思います。

 

 

 

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※ 左のグラフは過去3年の同時期の出荷量を表したもの。右のグラフは過去3年の同時期の出荷体重を表したもの。

JASVブログ第200回

こんにちは。

㈱ピグレッツの森野寛子です。

 

いよいよ梅雨に入り、じめじめした気候になってまいりました。

田畑にとっては恵みの雨かと思いますが、「じめじめ」は病原体が好む環境、なるべくカラッとあって欲しいものです。

 

さて

ご存じの方も多いかと思いますが、こちら千葉県下の養豚農場では、「豚流行性下痢(PED)」が猛威を振るっております。

PEDウイルス(コロナウイルス)に侵入されてしまった農場では、生まれたての子豚たちが重度の下痢を起こし、次々と命を落としています。

 

これまで実験動物の世界などにいて、一般の方とは比べ物にならないくらいの数の動物を殺生してきた私。

「死んじまえ!」とか「殺してやるぅ~」なんて悪態は、冗談で言うのもはばかられる心情で過ごしてきたわけですが

PED感染をうけ、かわいらしいピカピカの子豚たちが見るも無残な姿になって死んでゆくのを目のあたりにし

「コロナウイルスめ!死ねぇ!くたばっちまえ!」と悪態をつきながら、ウイルス汚染が疑われる物品などに消毒液をぶちまけております。

 

そしてこんなふうに懸命に消毒をし、防疫を強化しているつもりでも、一向に感染拡大がおさまる気配はありません。

もちろん、伝染病である以上、完璧な防疫体制であれば感染は起こらない(病原体は入ってこない)と考えます。

しかし、農場では常にいろいろな物品が出入りし、ヒトも出入りし、豚も出入りし、野鳥や野性動物なども出入りしてしまいます。

「完璧な防疫体制」というのはとても困難なことだとは思いますが、少しでも完璧に近づける努力、というのはあきらめないでいきたいと思うのです。

今までやってきたことを続けるのではなく、少しずつでもバージョンアップし進化していく、

何事にも大切なことではないかしら、私自身もそうありたい、とカッコよく考えております。

 

そして、このPED感染が防疫の意識や対策を変えていくうねりとなり、今後、他の感染症をも封じ込めることにつながればいいなぁ、

「災い転じて福となす」、そんなふうになっていくことを心より願う次第です。

 

 写真:PED感染農場で、発生から5日目、豚舎内でウイルス量が爆発的に増えていたと思われる時期に誕生した子豚たちです。

この兄弟や誕生日の近い子豚たちの多くは死んでしまいましたが、手厚い看護もあって、この2頭は踏んばりました!

写真は、生後2週齢の時点で撮影したものです。

「よく頑張ったなぁ~」としみじみ見ていると、駆け寄ってきました(涙)。 

 

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