JASVブログ第207回

 みなさんこんにちは!()サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!

 

38℃を超えるような猛暑も終わり、やっと過ごしやすくなってきたのもつかの間、今度は日中と夜間の寒暖差が大きくなり、豚も人も体調を崩しやすい時期になりました。僕も最近は鼻がムズムズしており、季節の変わり目には気を付けなければならないとしみじみ感じています。肺炎が多くなるのもこの時期です。注意深く豚の様子を観察し、豚舎の温度管理や風の向きに注意しましょう。そして寒暖の差に苦しめられた秋が終わると、今度は本格的な冬になります。これまでは暑さ対策に奔走していた農家さんも、これからは一足先に冬場の準備に取り掛かり、万全を期して冬場を迎えましょう。

 

さて私は、先日92日~3日にマレーシアのコタキナバルで開催されたHigh Quality Pork Congressに参加させていただきましたので、今日はそのことについて報告させていただきます。セミナーが開催されたコタキナバルはマレーシア・サバ州の州都で、東マレーシア(ボルネオ島のマレーシア領地域)で最大の都市です。セミナーはホテル内のコンベンションセンターで行われました。

セミナーの内容は獣医というよりは養豚農家向けの内容が多く、現在の養豚産業の世界状況や、その中でのアジア(特に中国)が影響力を強めているといった内容、また生産成績を大きく改善した養鶏産業を例にとって養豚産業発展のヒントを探すという内容でした。また製品をブランド化し、他製品と差別化して利益を得ているプリマハム(イタリア)を例にしたブランド養豚産業についても解説していました。2日目は生産方式について畜産コンサルタントのJohn Carr氏による離乳頭数を安定化させる方法など、実際の現場作業に即した内容が充実していました。

2日間で様々な演題が紹介されましたが、特に印象に残ったのはJohn Carr氏の離乳母豚の発情確認方法です。通常母豚の発情確認に使う雄豚(通称:当て雄)は若くて活力がある雄豚を使いますが、それだけでなく2頭の雄を使って雌の前でケンカさせながら当て雄に使うという方法もあるそうです。具体的には母豚3頭の目の前に柵で仕切り、その中に雄を入れ、その隣の母豚3頭の前にも雄を入れるというものです。(図1参照)それにより雄は目の前の雄に闘争心を掻き立てられ、興奮状態になります。その状態で母豚の発情確認をすると興奮した雄豚に触発され、発情がよく確認できるということでした。実際にどの程度の効果があるのかは養豚場によって異なると思いますが、繁殖成績が思うように伸びず、その原因が母豚の発情回帰期間にある農家さんは、一度試してみる価値があるのかもしれません。

図1

 雄2頭.png

※雌豚3頭の前に1頭の雄豚を置き、雄豚を2頭配置する

 

 

今回のセミナーでも様々な方法が紹介されましたが、養豚に絶対の方法はないと思います。しかしいろいろな方法を検証し試していくことができるのも養豚産業のやりがいのある部分だと思います。僕もたくさんの現場経験を蓄積していき、一番そこの農場にとって価値のある情報を提供できるように努力していきたいと思います。(下写真:セミナー後の食事会会場の前にて)

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JASVブログ第206回

 

 

こんにちは。豊浦獣医科クリニックの古川誠です。

 9月に入り夜は秋風が走るようになりました。暑がりの私は夏の間クーラが欠かせないのですが、ようやくクーラ無しで過ごせる夜が増え、着実に秋が近づいているんだなと実感する毎日です(とはいえ昼間はまだまだ暑いですが…)。

  

今回は養豚獣医師として必須になりつつある重要なスキルである英語力に関して書かせていただきたいと思います。

 養豚獣医師として働き始めて感じたこととして、意外に英語を使う機会が多いなということがあります。海外の文献を読んだりすることはもちろんですが、海外から講師を招いての勉強会やセミナが年に数回あります。勉強会やセミナでは通訳の方が入るので内容を理解することには問題はありませんが、やはり講師が話される言葉を直接理解できるのに越したことはありません。また勉強会やセミナの後には懇親会が開かれますが、英語力があればその場で講師に突っ込んだ質問も可能ですし、本番では話してくれなかったような裏話や情報を聴けたりすることもあったりなかったり…。そんな訳で他の職種と同様に養豚獣医師もこれからますます英語が必要不可欠なスキルとなってくると思われます。

 私自身も英語の勉強法に関しては遡ること高校時代から今に至るまであれこれ興味を持って試してみました。そんな玉石混合試す過程でちょっとした奇跡(?)の物語がありますので、それを紹介させていただこうかと思います。

 

  

私が英語の勉強方法をあれこれ模索していた時代は、ネット時代到来の夜明け前という頃で、今と違ってそれほどパソコン自体も普及しておらず、現在では定番の語学学習ツールであるStreamingPodcastなどは存在すらしていない時代でした。ネイティブの英語に触れるには衛星放送かNHKの副音声放送くらい、関西で生まれ育ったのでAFN(旧FEN)は受信することができず悔しい思いをしたことを覚えています。

  

 

そんな2004年のある日、実家で朝日新聞を読んでいるとコラム欄(天声人語)に目が留まりました。記事はハーバード大学で歴史学の教授をされていた入江昭氏(歴史学の世界では知らない人がいないくらいの超有名人だそうです)のインタビュが中心で概要は以下のようなものでした。

  

01年のNYの同時多発テロ以降テレビを観なくなった。代わりにラジオを聴いている。

■どんなラジオかというとMPR。同僚や友人もそういう人が多い。

MPRとはミネソタパブリックラジオ(http://minnesota.publicradio.org/)のこと。MPRはミネソタ州を拠点に全米に番組を流している非営利放送局である。

MPR10の信条を掲げている(「外からのいかなる介入も断固拒否する」「ニュースとエンターテインメントとを峻別する」「人気や聴取率のためには番組をつくらない」など)

 

当時英語の勉強法を模索していた私は俄然MPRに興味を持ちました。さっそくネットで検索したところホームページは簡単に見つかりましたが、当時はStreamingPodcastによる配信サービスもまだなく、実際に渡米する以外MPRを聴く方法はないとわかり、AFNが聴けなかった時と同様がっくり肩を落としましたことを覚えています。

  

 

しかし日進月歩のネットの進化は想像以上に早く、記事を目にしてから数年後(おそらく2008年あたり)にStreamingPodcastによる番組配信がスタートし、日本にいながらMPRを聴くことが可能になりました。イメージ的にシリアスな番組ばかりなのかなと思っていたのですが、実際はシリアスな内容ばかりでなく歌あり、コメディあり、クイズありと非常にバラエティに富んでいて、もちろん100%理解することはできなかったものの、飽きずに楽しむことができました。MPRを聴き始めてリスニング力の向上にずいぶん役に立ったのではないかと思います。

 

 

その後大学を卒業し養豚獣医師としてそれなりに忙しい日々を過ごすようになりましたが、以前ほどではないものの、寝る前や移動中のちょっとした時間にMPRは聴き続けていました。

そして獣医師となって2年目の2013年のある日、クリニックからアメリカでの養豚場視察をするチャンスが与えられました。行先はなんとミネソタ!あのMPRのミネソタ!そう、ミネソタはアメリカでも有数の養豚が盛んな地域なのです!!

数ある獣医師としての選択肢の中で養豚獣医師を選ばなければおそらく一生ミネソタに行くことはなかったと思います。

まさに養豚が縁となって“生のMPRを聴く”というおよそ10年前の夢が回りまわって実現することになったのでした。

 

 

渡米の時を迎え、飛行機に乗って生まれて初めてのアメリカへ。視察が終わってホテルの自分の部屋に戻り、ドキドキしながらベッドに据え付けられているラジオのスイッチを入れチューニング…やがて流れてきた聞き覚えのあるMPRの番組…ネット配信ではなく電波に乗って流れてきた憧れのMPRを聴いた時の感動は忘れることができません…。

 

 

この記事を書いて改めて英語を勉強し直さなければと背筋を伸ばす思いになりました。

来年の6月には京都で国際新興・再興豚病学会(ISERPD)が開かれます。海外から大勢の養豚関係者が来日されると思います。ホスト国の獣医師としてゲストのみなさんとコミュニケーションが不自由なくできるように、来年6月までMPRを聴きこんで臨もうと思います。

  

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当時の記事(天声人語)。普段新聞の切り抜きなどしないのでよほど印象に残ったんだと思います。

JASVブログ第205回

こんにちは。

㈱ピグレッツの森野寛子です。

 

千葉県で猛威をふるっていた豚流行性下痢(PED)も、新たな感染の報告は7月半ばより無くなり、県全体では小康状態になったかと思われます。

ただ、同様のことが今後いつおこるやらも知れず・・・いっそうの警戒をしていきたいところです。

 

さて

少し前の話になってしまいますが、「面白いよー」とのふれ込みをうけて、映画「銀の匙」を見に行ってまいりました。

 

映画の舞台は、北海道の農業高校。

主人公は、受験競争に疲れ果て、教育熱心な両親にもうんざりし・・・「全寮制で家を出られる」ということだけにひかれて農業高校への進路を選んだ八軒(はちけん)くんという高校生です。

 

人気漫画が原作ということで、基本的にはコミカルなストーリーですが

農業、特に畜産の現状を真っ向からとらえたシビアな場面がしばしば出てきます。

学校で飼育している豚を屠殺する、というシーンでは、電気ショックを与え放血死させるという生々しい場面が出てきたり

また、八軒くんの同級生で酪農家の息子である駒場くんの実家は

お父さんが亡くなって経営が苦しくなってしまい、農場を手放すと共に高校を退学せざるをえなくなる、という場面もありました。

 

「そりゃーないだろ」とつっこみたくなるところも多少はありましたが

おおむねは実際の農業や畜産の現場を映し出しており、いろいろ考えさせられる面白い映画でした。

 

そこでふと、同じ映画館で観ているまわりの人たちを思い・・

世間一般の人たちが、どれくらい畜産の現場を知っているのだろうか?と考えました。

 

私の周りにも

「ホルスタインならみんな(オスでもメスでも)牛乳が出る」と思っている人もいて

「哺乳類なんだからさ~、子どもを産んだ後のメスしかおっぱいは出ないんだよ。」

と答えると「えっ!そうなの?」なんて驚かれることも。

 

ふだん豚肉や牛肉や卵を食べて牛乳を飲んで、こんなにも日常生活でお世話になっているにもかかわらず、豚をはじめとする家畜たちがどうやって飼われているのか、どうやってお肉になるのか、世間の人々はほとんど知らないのではないでしょうか。

 

畜産の現場と食卓がもっと近くなり、「畜舎はくさい!」ではなく

「あの建物のなかで美味しいお肉を育ててくれてるんだなぁ」と思っていただけるように、私も出来るだけのことをしていきたい、そう思いながら映画館を後にしたのでありました。

 

ちなみに

先日髪を切りに行った美容院で、美容師さんに「何のお仕事をされているのですか?」ときかれたので

「豚の仕事をしています。」と答えたら

「うちのおじいちゃんちで、以前豚を飼ってたんですよ~、おうちの横に豚がいてねぇ・・」なんて返事がかえってきました。

さすが千葉県旭市!家畜がたくさんいるから、畜産も身近なんですね。

なんだか嬉しくなりました