JASVブログ第236回

 

 JASVブログをご覧の皆様、イデアス・スワインクリニックの早川結子です。

 

 世間はもう12月。暖かめだった11月から一転、雨混じりの北風が吹きつける厳しい寒さとなったり、寒さそのものより気温の変化の激しさが人にも豚にも大きなストレスになっています。そんな冬の到来を祝って、つれづれなるままに、冬について書いてみようと思います(今回はかなり軽いタッチで書かせていただいております。)


 冬といえば・・・鍋ですね!鍋は最強の時短レシピで、材料を刻んで一つの鍋に放り込み、ぐつぐつ煮れば出来上がり。根菜も葉野菜もきのこも魚介も肉も豆製品も一挙に食べられるという優れもの。最近は色々な鍋のもとが売っていて、手軽にバリエーションが楽しめるのが嬉しいところ。テーブルの真ん中にごん!と鍋一つ置き、あとはごはんと取り皿で配膳が済むなんて、もちろん片付けも超ラクで、食べれば「やっぱ鍋だねえ~っ」とほっこり幸せになれる・・・鍋最強です。が、鍋で幸せになるのに欠かせないものが一つだけあります。それは・・・おいしい豚肉です!うまい肉を食らうと人はなぜこんなにも幸せになれるのか。細胞が快哉を叫ぶというか、ヒトは肉を求めて進化してきたに違いないと、実感する瞬間です。とりわけ豚肉は魚介との相性がよく、寄せ鍋には本当に持ってこいです。またこの仕事を始めてから、家族が豚肉を食べてほわ~っとなっている様を見ることで幸せが倍増するようになりました。

 

 冬と言えば・・・こたつ、でしょうか?実は我が家は「こたつは堕落を招くゆえ禁ずる」という家訓があります。これは私が千葉でモルモットと2人暮らしを始めたころに作ったもので、家族が増えた今でも厳格に守られています。が、寒さが厳しいときはホットカーペットをぽちっとし、その上に毛布をかけてぬくぬくと収まったりしており、これではこたつとなんら変わらぬので、いっそのことこたつを導入してしまおうかと思うこともしばしばです。が、もし我が家にこたつが導入されたら・・・と想像すると、まず3匹の猫たちがこたつに消え、猫を押しのけて娘たちが2か所の間口を占拠し、残ったスペースに私と主人が収まり、ぎゅうぎゅうのこたつから誰一人立とうともせず、食事も入浴も下手したらトイレもままならぬままひたすらぬくみを貪り睡魔に負け続ける堕落集団が出来上がること間違いなし。というわけで今年もこの家訓は守られることでしょう。私がよそでこたつに入る機会を得たとき、反射的に首まですっぽり入ってしまうのをとめられないのは、普段から徹底した禁こたつ欲生活をしているためとご容赦下さい。

 

 最後に冬と言えば・・・・ヒートテックですよ!このハイスペック下着のおかげで冬季の活動限界温度がどれほど引き下げられたことか。素材の薄さと裏腹に本当に暖かく(というか、寒くない)、防風機能のある上着とセットで上下に仕込めば冬の寒空もなんのその。豚舎内でちょっと体を動かせば汗ばんでくる勢いです。このミラクルな素材の原理を知ろうとネットをさまよっていたら、養豚における温度管理にも応用できそうな熱力学が詰まっていることがわかりました。が、ここまで非常に軽いノリで来てしまったので、小難しい話は無しにしましょう。とにかく、ヒートテックは暖かい!まだ未体験の方には強くおススメします。

 

 そんなわけで、寒い冬はこたつに入らずヒートテックを着て元気に働き、おいしい豚肉のたっぷり入ったほかほか鍋で乗り切りましょう!

JASVブログ第235回

みなさんこんばんは。㈱豊浦獣医科クリニックの古川誠です。11月に入っても日中はまだ汗ばむような陽気が続いていましたが中旬に差し掛かるころになってようやく気温も下がり始め、秋が終わりに冬の入口に一歩また一歩と近づいているなと感じる毎日です。

 

さて、先月末の話になりますが、フィリピン・マニラで行われたアジア養豚獣医学会(APVS)に参加する機会がありましたのでそのことについて書かせていただこうと思います。

 

農場視察や研修などで海外に行く機会はこれまで何度かあったのですが、学会参加のために海外に出るのは初めてだったので出発前からとても楽しみにしていました。

APVS自体に関しては、欧米諸国の養豚先進国と比較するとアジア全体の養豚産業はまだまだ黎明期という感じで目新しい知見などはそれほど多くなかったように思いますが、各国の養豚事情や概況をまとめて知ることができ、またアジアにおける日本の立ち位置もずいぶん見通しが良くなったような気がしました。

パーティや講演予定の時間が毎回遅れるなどアジア的なというか、良く云えばのんびりした、悪く云えば適当なところも多々ありましたが、イメージしていた海外の学会の華やかな雰囲気は存分に味わうことができて個人的にはとてもいい学会だったように思います。今回は日本人の発表も多く存在感を示していて、いつか自分も発表しなくてはならないなと来たるべき機会に向けて思いを新たにしました。

 

今回のAPVSはフィリピン・マニアで行われるということで、フィリピンの養豚のある点に関して着目をしていました。

それはアニマルウェルフェアに関してです。

フィリピンに関する情報を仕入れておこうと、出発前と飛行機の中で水谷竹秀著「日本を捨てた男たち フィリピンに生きる『困窮邦人』」と同じ著者の「脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち」の2冊に目を通していきました。

後者は仕事をリタイアし余生をフィリピンで過ごしている人にフォーカスを当てています。作者の水谷竹秀は、いろいろな事例を挙げながらフィリピンでの老後生活は日本人が思い描いているほど甘くはないよと釘を刺す一方で、現地に順応し悠々自適にそして幸せに暮らしている人々も紹介していて読後感は悪くなく、こういう余生の過ごし方もあるのだなと考えさせられます。しかし、前者はタイトルが直截に示す通り、現地で強盗にあった、仕事で騙された、日本で罪を犯し逃亡してきた、日本のフィリピンパブで知り合った女性を追いかけてきた、などさまざまな理由でフィリピンにやってきたものの、やがて所持金も果て帰国することも不可能なほど困窮状態に陥った日本人を徹底取材した迫真のノンフィクションで、読後ズシリと心に重さを残す内容でした(作中示されたデータによると、2010年度に在外公館に駆け込んできた困窮邦人の数は768人で、そのうちフィリピンは332人と最も多い割合を占める)。

困窮邦人がフィリピンでどのような生活をしているのか、そしていかにして困窮邦人となったのか…作者は日本とフィリピンを何度も行き来しながら丹念に困窮邦人の半生追いかけていますが、私はこの本を読んで困窮邦人の数奇で悲劇的な運命に驚かされたのはもちろんですが、それ以上に驚いたのは困窮邦人に救いの手を差し伸べるフィリピンのスラム街で暮らす人々の姿でした。

決して裕福な国とはいえないフィリピンの中でも最下層の暮らしをしているスラム街の人々が、裕福な日本からやって来てフィリピンでホームレスと化した日本人を家に招きテーブルを共にしながら食事を与え、時にはシャワーを浴びさせ洗濯もしてあげる…この本の中ではそのような奇妙でいびつな構図が幾度となく描かれています。

彼らは自分の日々の暮らしだけでも大変なのになぜ日本人ホームレスを助けてあげるのか、読んでいて私にはこの部分だけはどうしても理解することができませんでした。この点に関しては著者も同じ感想をもったらしく何度も現地の人々に理由を尋ねるのですが、返ってくるのは「困っている人がいれば助けてあげるのが当たり前」の一点張り。

フィリピンはキリスト教国(ASEANで唯一)であることが大きく影響しているのは間違いありませんが、それにしてもここまでの博愛精神は特定の宗教を持たない私にとって理解を遥かに超えたものでした。

そして次に頭に浮かんだのが、このキリスト教に基づく博愛精神が養豚産業におけるアニマルウェルフェアという概念をどう捉えているのかという疑問でした。

 

フィリピンの養豚産業を紹介する講演の中で、アニマルウェルフェアに触れた箇所はなかったので、まだまだそのようなことを話題にするレベルや段階ではないのかもしれません。

しかし世界の兆候として、アニマルウェルフェアに関する考え方は着実に浸透していっています。

もしアニマルウェルフェアが十分に守られた環境で育てられた豚がある種のブランドになって輸出の際の武器になると彼らが判断し、アニマルウェルフェアに本腰を入れようと仮定したらどうなるでしょうか。キリスト教の精神は“汝の隣人を愛しなさい”と説いていますが、人間以外の動物を愛しなさいとは規定していません。

フィリピン人は家畜に対してどのような考え方を持っているのか、そしてアニマルウェルフェアという概念をどのように捉えているのでしょうか。

宗教とアニマルウェルフェアの関連性を論じた意見は寡聞にして聞いたことはありませんが、キリスト教という素地を持つフィリピン人ならば、日本人とは異なる思考回路、いや感覚でアニマルウェルフェアの精神を受け入れそれを遵守できるのかもしれないな、とそんなことをつらつらと考えながら過ごしたフィリピンでの4日間でした。

 

 

 最終日に行った教会。本当は「困窮邦人」に出てくるバクララン教会に行きたかったのですが、ここも荘厳な雰囲気の素晴らしい教会でした。

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