JASVブログ第245回
皆さまこんにちは。
㈱バリューファーム・コンサルティングの大久保光晴です。
お盆も過ぎ、暑さも和らぐかと思いきや、気象庁の季節予報によるとまだまだ暑い日が続きそうです。暑さ寒さも彼岸までとも言いますが、皆さんくれぐれもご自愛ください。
今回は水について話したいと思います。豚の管理では餌・水・空気(環境)をしっかり豚に提供しなければいけません。皆さんご存知とは思いますが、水は動物にとって不可欠で、栄養失調症よりも脱水症の方がより致命的です。
皆さんの農場では、給水器の水量の目標はどのくらいでしょうか。
30kgまでの豚では600~700ml/分、肥育豚や母豚では1ℓ/分が最低限必要と考えていますが、離乳直後の子豚ではさらに給水皿を設け、1日に数回の給水を実施している農場もあります。
離乳直後の子豚では、体内の水分割合が高く水の要求量が多いので、殆んどの場合、離乳舎に移動しますから、母豚もいない新しい環境での給水は特に重要です。
体内の水分量は、生時直後では約80%、その後成長ともに60%程度に落ち着いてきます(出荷豚の体内水分については諸説あり)。
また給水器の管理をするに当たっては、水圧も重要です。
ところで現在、日本付近に3つの台風がありますが、990ヘクトパスカル(hPa)前後の中心気圧です。豚舎に設置している水圧計の単位は、大抵メガパスカル(MPa)と思いますが、共に圧力の単位であり、1MPa=1000hPa=1,000,000Paとなります。
0.1~0.15MPaの水圧をお勧めしていますが、現場ではそれ以上のことが良くあります。
では、例えば0.1MPaってどんなもの?と言いますと、10mの高さから1cm四方の床に1kgの水を落した力で、実はかなり強い力です。
水の管理は非常に重要で、今回は給水器について触れました。
この機会に皆さんの現場でも今一度、水に関する確認をしてみては如何でしょうか。
JASVブログ第244回
こんにちは。サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。
初回からあっという間の2回目のブログ更新となりました。
暑い日が続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
今回は7月30日に終了した弊社実施の新人研修についてお話ししたいと思います。
弊社では毎年5月から養豚1年生である新入社員の方に向けた研修を全3回にわたり行っており、私も新人のみなさんと一緒に講義に参加しました。
内容は繁殖、分娩、離乳、肥育の管理方法、病気の概要、豚肉消費の動向、農場HACCPの基礎についてなど多岐に渡ります。
講義後には受講生の方々からたくさんの質問が寄せられました。あげられた質問を少し紹介します。
・早産と流産の違いは?
・他の国では薬はどれくらい使う?
・なぜ臀部に注射は打たないほうがよい?
・飼料価格と枝肉価格に差がでるのはなぜ?
・初産豚の子豚で下痢が多いのはなぜ?
・ペレット・マッシュ・クランブルの違いは?
・離乳時に去勢するデメリットは?
・再発情はどうやって判断する?
・分娩1か月前の母豚に増し餌をして母豚は太らないのか?
質問はシンプルでありながらも、私自身も考えさせられ、勉強となる瞬間がたくさんありました。
最終回であった7月30日はメーカーの方々も一緒になり、BBQにて打ち上げをしました。
始球式ならぬ、始刀式を我らが石川先生が行ったスイカ割りは大変盛り上がりました!
BBQの際には勉強会中では聞けなかった受講生のみなさんの豚への思いを聞き、とても刺激的な1日でした。
㈲サミットベテリナリーサービス
数野由布子
(一発でスイカに命中した石川先生の一振り!)
JASVブログ第243回
みなさんこんにちは!(有)サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!
今年は例年に無い暑さが予想されておりますが、みなさん夏場対策は完了したでしょうか?
一般的な夏場対策としてはファンの設定やクーリングパッドの点検、ドリップクーラーの点検などか挙げられますが、これらの点検はお済みでしょうか?今回はこれらの対策を含めた、分娩舎での夏場の母豚管理について述べたいと思います。
分娩舎の母豚の適正温度は18~20℃程度が適切とされていますが、夏場の室内温度はこれ以上になることが多いと思います。環境温度が高いときは母豚にヒートストレスがかかります。
ヒートストレスが母豚に与える影響としては、食下量の減少や、離乳時ボディコンディションの悪化による離乳後発情回帰の遅延、受胎率の低下、それに伴う哺乳子豚の発育不良、そして熱中症による死亡などが挙げられます。さらにヒートストレスを交配時に受けた母豚は産子数が減少する傾向があり、その肉豚が出荷される時期になると出荷頭数の減少にもつながります。
経験上環境温度が26℃以上になると母豚は極端に暑がり、食下量が減少する傾向があるので、環境温度が26℃になる前にファンやクーリングパッドが最大限稼働するように設定しましょう。ヒートストレス対策として、上述したようなドリップクーラーや、スポットクーラーの設置で対応されている農場も多いと思いますが、母豚には10㎝/秒以上の風を全身に当ててあげることが効果的です。特に母豚の頭側に風が流れるように、風の流れを作ると良いでしょう。母豚に風を当てることで、環境温度が下がらなくても、体感温度を下げることができます。
また、母豚に送風する時に風が哺乳子豚に当たらないように注意してください。哺乳子豚に風が強く当たると下痢などの疾病を発症する危険が高まります。そのため哺乳子豚には風を避けることができる構造(例えば保温箱など)を用意しておくと、哺乳子豚を風から守ることができます。
実際の農場では大型ファンで風を流す他、ウィンドレス豚舎であれば入気側の風の向きを調節すると良いでしょう。このように、母豚へのヒートストレスを最小化することによって、1年を通じて安定した生産を維持できるようにしましょう。
(有)サミットベテリナリーサービス
渡部 佑悟