JASVブログ第271回

 こんにちは、あかばね動物クリニックの水上です。


 西日本豪雨から約1カ月経ちました。この災害では中四国、九州および北陸の広い範囲で多大な被害が発生し、多くの犠牲をだしました。この豪雨は激甚災害として認定されました。亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。

 その後、本州を中心とした連日の猛暑日が続いています。例年より梅雨明けが著しく早く、それにより夏がさらに長引くと推察されます。熱中症で救急搬送された方も多数見えます。農場現場での作業は涼しいところとは限りません。十分な休息とこまめに水分補給をして、無理をしすぎないようにしましょう。


 さて、7月20日に日本養豚開業獣医師協会の活動報告会および記念講演が開催されました。今回の記念公演は広島大学の島田先生による「精子運動性の基礎研究から繁殖技術の開発」。題名の通り、人工授精に深くかかわる内容でした。

研究と言うと現場とは程遠く、対極にあるように感じることさえあります。ですが臨床現場で用いられている技術の多くは、基礎研究の積み重ねから生まれてきたものが多いことも事実です。今回発表された内容は現場に即したものでした。

お話の中には精子の運動性について新しい知見が多数含まれていました。私の中で特に印象に残ったこととしては、精漿に含まれている様々な物質の量によってその後の精子活性に大きな影響を与えるということです。過去の検査では一つの物質を1回ずつ分析しなければならなかったものが、現在では複数の物質を同時に高感度で分析できるようになってきています。

私も大学生の頃、卒業論文のために実験をしていました。過去の研究や現場から結果は推測出来ても、最終的な結果は分らないのが研究です。時間と労力を必要とする実験を繰り返さないとその結果も導き出せません。大学や民間の研究者の方々は、卒業論文とは比べられないほどの、複雑かつ綿密な研究によって新たな技術や商品の開発に寄与しています。

日本の科学研究が失速していると多方面から言われています。それでも養豚の現場的な研究をされている方々は周りに何人もいらっしゃいます。そこから得られた知見が現場で使われるかどうかは、最終的には現場での判断になります。またフィードバックすることで、研究が次のステップへ向かいます。より現場的な技術を求めるのであれば、現場の声を研究および開発へ伝える、意見のキャッチボールをしていきましょう。

posted by JASV at 11:19Comment(0)日記

JASVブログ第270回

皆様こんにちは、イデアス・スワインクリニックの早川です。

私がこのブログを前回更新したのは去年の大晦日でした。それから既に半年が過ぎ、一年の折り返し地点を迎えてしまいました。毎度のことながら時の速さにびっくりです。


あっという間に季節が移ろっていく間、大変貴重な体験をしました。過日(今年5月)のことになりますが、イリノイ大学PRRS特別講座と題したJim Lowe先生のワークショップに参加する機会を頂いたのです。と言っても、イリノイまで出かけたのではなく、会場は東京で、このブログの執筆メンバーである若手の先生方をはじめ、国内で様々な立場から養豚に携わる獣医師30余名の1人としての参加でした。

3日間でPRRS対策を学ぶということで、どんなカリキュラムになるのか初めは見当もつきませんでした。始まってみると、これまで自分が学校で学んできたこと、実践経験で意識的あるいは無意識に身に着けてきた全てが、鮮やかに分子のレベルにまでに分解され組み直され、新たに有機的なシステムに体系付けられていくことに衝撃を受けました。


Jim先生は、第一講義「動物衛生学におけるエンジニアリングベースアプローチの適用」で、いきなり獣医師の仕事はシステムエンジニアである、と説かれました。養豚管理獣医師は、養豚場というシステムを理解し、システムがどうしたらうまく機能するのかを明らかにし実践することが仕事である、というのです。

確かに自分が行ってきたのはその通りのことなのですが、自分はSEであると発想したことはありませんでした。実は私の弟はシステムエンジニアであり、仕事の話を聞くと非常に面白く、似ている点があるとは思ってきました。それでも、コンピューターと養豚場(あるいは豚という生物)、両者は全く異なるものだと思ってきました。しかし、実は両者は同じものであり、このトポロジーの原則は「対象をシステムとして捉える」ことに他ならなかったのです。

この考え方で重要なのは、生じてくる事象そのものに注目するのではなく、事象と事象の関係性に目を向けることにあります。近年、医学の領域でもこの考え方のもとに健康や病気が捉え直され、新たな治療アプローチが生み出されています。

今回のお話を聞いて、これまで無意識に、また不完全に使ってきた思考法でしたが、これからは私も意識的に活用して問題解決に役立てようと思いました。


研修では、Jim先生の講義の他、グループワークも用意されており、グループごとに実践的な課題を与えられました。

私のグループは、たまたま若手の養豚管理獣医師ばかりが集まり、wean-to-finish型の農場における高い離乳後事故率を改善するという課題に取り組みました。みんなで様々な考えを出し合い、一つの案にまとめていく作業は大変面白く、刺激的で勉強になりました。


グループワークに限らず、3日間の充実したプログラムを通じて、これまでの枠組みを超えた一種の連帯感を参加者全体で感じることができたのは、何にも勝る財産となりました。

企画・運営の皆様、Jim先生に心より感謝いたします。

この体験を業界に還元できるよう頑張りたいと思います。

早川1.jpg

グループワークの様子


早川2.jpg

修了証書授与式後、皆さんで

posted by JASV at 15:50Comment(0)日記

JASVブログ第269回

みなさんこんにちは!()サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!


この度611日から614日まで開催された、国際養豚獣医学会(IPVS)に参加する機会を頂きましたので、今回は、簡単な報告とさせていただきたいと思います。

今回のIPVSは中国の重慶で開催されました。重慶は中国の主な都市の一つであり、市内総生産額は中国の都市でも5位の工業都市です。市内の総人口も3022万人おり、驚きました。気候は盆地であるが故に夏は酷暑となり、7月の平均気温は28.3℃に達し、湿度も高く非常に蒸し暑い気候になります。そのため長江流域の武漢、南京と並んで「三大火炉」と呼ばれているそうです。年中曇りや雨の日が多く、中国で最も日照時間が少ない都市の一つです。

今回の学会では世界中で今話題になっている議題について発表がありました。多くの発表があり、そのすべてを紹介することは出来ないのですが、ここでは最近新しく発見されたウイルスであるPCV3について少し触れてみたいと思います。PCV3はアメリカで2016年に初めて見つけられたウイルスです。それ以降の検査により、ブラジル、中国、ポーランドなど、様々な国でもウイルスが検出されています。さらに過去の血液検体を遡って検査してみると、過去の検体でもPCV3が検出されており、この病原体が突然地球上に現れてきたわけではなく、何年も前から存在していたということが分かってきています。しかしその病態については現在も調査中であり、PCV3が豚に与える病態というものは詳しく分かっていません。そもそも、PCV3に病原性があるのかどうかですらも、まだ確実なことが分かっていないのが現状です。今後さらに研究分野や臨床分野でさらに知見が集まってくることを期待するばかりです。 

さて、今回の学会で僕が一番思い出に残った出来事としては、初めて口頭発表したことです。海外の学会なので、英語を使ったプレゼンテーションをすることになったのですが、なんとか無事に終えることが出来ました。僕が発表した内容はP-JETチームで作成したBioAsseTについてでした。(BioAsseTの詳細についてはhttp://site-pjet.com/参照) BioAsseTのコンセプトや結果の見方について説明をしました。発表後に聴衆から質問があったり、終了後にあいさつに来てくれた方がいたりするなど、発表したことは有意義でした。今後は今回の経験をさらに現場にも役立てられるようにしていきたいと思います。プレゼンに協力していただいた方々や、発表を勧めてくれたP-JETメンバーの皆様方にこの場を借りてお礼申し上げます。


(有)サミットベテリナリーサービス

渡部 佑悟

IMG_5891 (1).JPG

posted by JASV at 17:04Comment(0)日記