JASVブログ第270回

皆様こんにちは、イデアス・スワインクリニックの早川です。

私がこのブログを前回更新したのは去年の大晦日でした。それから既に半年が過ぎ、一年の折り返し地点を迎えてしまいました。毎度のことながら時の速さにびっくりです。


あっという間に季節が移ろっていく間、大変貴重な体験をしました。過日(今年5月)のことになりますが、イリノイ大学PRRS特別講座と題したJim Lowe先生のワークショップに参加する機会を頂いたのです。と言っても、イリノイまで出かけたのではなく、会場は東京で、このブログの執筆メンバーである若手の先生方をはじめ、国内で様々な立場から養豚に携わる獣医師30余名の1人としての参加でした。

3日間でPRRS対策を学ぶということで、どんなカリキュラムになるのか初めは見当もつきませんでした。始まってみると、これまで自分が学校で学んできたこと、実践経験で意識的あるいは無意識に身に着けてきた全てが、鮮やかに分子のレベルにまでに分解され組み直され、新たに有機的なシステムに体系付けられていくことに衝撃を受けました。


Jim先生は、第一講義「動物衛生学におけるエンジニアリングベースアプローチの適用」で、いきなり獣医師の仕事はシステムエンジニアである、と説かれました。養豚管理獣医師は、養豚場というシステムを理解し、システムがどうしたらうまく機能するのかを明らかにし実践することが仕事である、というのです。

確かに自分が行ってきたのはその通りのことなのですが、自分はSEであると発想したことはありませんでした。実は私の弟はシステムエンジニアであり、仕事の話を聞くと非常に面白く、似ている点があるとは思ってきました。それでも、コンピューターと養豚場(あるいは豚という生物)、両者は全く異なるものだと思ってきました。しかし、実は両者は同じものであり、このトポロジーの原則は「対象をシステムとして捉える」ことに他ならなかったのです。

この考え方で重要なのは、生じてくる事象そのものに注目するのではなく、事象と事象の関係性に目を向けることにあります。近年、医学の領域でもこの考え方のもとに健康や病気が捉え直され、新たな治療アプローチが生み出されています。

今回のお話を聞いて、これまで無意識に、また不完全に使ってきた思考法でしたが、これからは私も意識的に活用して問題解決に役立てようと思いました。


研修では、Jim先生の講義の他、グループワークも用意されており、グループごとに実践的な課題を与えられました。

私のグループは、たまたま若手の養豚管理獣医師ばかりが集まり、wean-to-finish型の農場における高い離乳後事故率を改善するという課題に取り組みました。みんなで様々な考えを出し合い、一つの案にまとめていく作業は大変面白く、刺激的で勉強になりました。


グループワークに限らず、3日間の充実したプログラムを通じて、これまでの枠組みを超えた一種の連帯感を参加者全体で感じることができたのは、何にも勝る財産となりました。

企画・運営の皆様、Jim先生に心より感謝いたします。

この体験を業界に還元できるよう頑張りたいと思います。

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グループワークの様子


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修了証書授与式後、皆さんで

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JASVブログ第269回

みなさんこんにちは!()サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!


この度611日から614日まで開催された、国際養豚獣医学会(IPVS)に参加する機会を頂きましたので、今回は、簡単な報告とさせていただきたいと思います。

今回のIPVSは中国の重慶で開催されました。重慶は中国の主な都市の一つであり、市内総生産額は中国の都市でも5位の工業都市です。市内の総人口も3022万人おり、驚きました。気候は盆地であるが故に夏は酷暑となり、7月の平均気温は28.3℃に達し、湿度も高く非常に蒸し暑い気候になります。そのため長江流域の武漢、南京と並んで「三大火炉」と呼ばれているそうです。年中曇りや雨の日が多く、中国で最も日照時間が少ない都市の一つです。

今回の学会では世界中で今話題になっている議題について発表がありました。多くの発表があり、そのすべてを紹介することは出来ないのですが、ここでは最近新しく発見されたウイルスであるPCV3について少し触れてみたいと思います。PCV3はアメリカで2016年に初めて見つけられたウイルスです。それ以降の検査により、ブラジル、中国、ポーランドなど、様々な国でもウイルスが検出されています。さらに過去の血液検体を遡って検査してみると、過去の検体でもPCV3が検出されており、この病原体が突然地球上に現れてきたわけではなく、何年も前から存在していたということが分かってきています。しかしその病態については現在も調査中であり、PCV3が豚に与える病態というものは詳しく分かっていません。そもそも、PCV3に病原性があるのかどうかですらも、まだ確実なことが分かっていないのが現状です。今後さらに研究分野や臨床分野でさらに知見が集まってくることを期待するばかりです。 

さて、今回の学会で僕が一番思い出に残った出来事としては、初めて口頭発表したことです。海外の学会なので、英語を使ったプレゼンテーションをすることになったのですが、なんとか無事に終えることが出来ました。僕が発表した内容はP-JETチームで作成したBioAsseTについてでした。(BioAsseTの詳細についてはhttp://site-pjet.com/参照) BioAsseTのコンセプトや結果の見方について説明をしました。発表後に聴衆から質問があったり、終了後にあいさつに来てくれた方がいたりするなど、発表したことは有意義でした。今後は今回の経験をさらに現場にも役立てられるようにしていきたいと思います。プレゼンに協力していただいた方々や、発表を勧めてくれたP-JETメンバーの皆様方にこの場を借りてお礼申し上げます。


(有)サミットベテリナリーサービス

渡部 佑悟

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JASVブログ第268回

こんにちは。サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。


今年がスタートして5カ月が過ぎましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

弊社、㈲サミットベテリナリーサービスには、4月に獣医師の新入社員くんが入社しました。4月から半年間は農場研修中なので、まだ会う機会は少ないのですが、ついに私も先輩になるときがやってまいりました(^-^;) 半年後が楽しみです!


話は変わり、今回はJGAPについてお話ししようかと思います。

先日、58日~9日の2日間で、JGAP指導員基礎研修に参加して来ました。


JGAPといえば、2020年の東京オリンピックとパラリンピックで自分たちの豚肉を提供するためには・・?ということで話題になってきました。


今回の研修では、JGAPの基礎的な概要から、実際に審査に必要な書類などについて学びました。

まず、皆さんも気になるオリンピックについてですが、20173月に正式に、東京オリンピックとパラリンピックにおける畜産物の調達基準として、

・食材の安全の確保

・環境保全に配慮した畜産物生産活動の確保

・作業者の労働安全の確保

・快適性に配慮した家畜の飼養管理

4項目を満たしていることを示す方法のひとつとしてJGAPが示されました。


そもそもGAPとは、「Good Agricultural Practice」の略で、「良い農場のやり方」ということです。


JGAPは、食の安全や環境保全などに取り組む農場に与えられる日本のGAP認証制度のことになります。一般財団法人日本GAP協会がスキームオーナーとして認証制度の開発・運営を行っています。


これまで、私たちにとって身近な認証制度といえば、農場HACCPでした。農場HACCPは、豚(原料)の製造・出荷までのすべての生産工程において、あらかじめ起こり得る危害(生物的、化学的、物理的)を未然に防ぐために、管理ポイントを設定し、継続的に監視・記録を行うシステム認証のことです。


JGAPは、農場HACCPとは異なり、システム認証ではなく、製品認証です。

農場管理、食品安全、家畜衛生、環境保全、労働安全、人権の尊重及びアニマルウェルフェアの視点から適切な生産工程管理のあり方を定めたものです。


管理項目については、農場HACCPと重なっている部分も多く、HACCPで足りない部分をJGAPが補っています。そのため、農場HACCP認証を取得されている農場がJGAP認証を受けたい場合は、差分審査というものも受けることが可能になっています。

JGAP認証のために、新たに取り組む必要があるのは、環境保全、労働安全、人権の尊重及びアニマルウェルフェアの部分になります。


研修の中で、驚いたことがありました。2012年のロンドンオリンピックでは、食材調達基準として、レッドトラクター認証が用いられていました。レッドトラクターは、イギリスの農業者団体が運営するGAP認証制度であり、イギリス国内の農業者の7095%が加盟しており、農畜産物の80%以上をカバーしているとのことでした。つまり、GAP認証は、製品の差別化を目的に取得しているわけではなく、GAP認証を取得することが当たり前になっているという事実でした。オリンピック・パラリンピックだけを目標にするわけではなく、農産物の安全性を第三者認証を活用して担保していくことが、今後求められていくのだなと感じました。



私が2週間に1回訪問させていただいている農場では、毎回豪華なランチをご馳走になっています。

農場の豚肉と、とれたての野菜をふんだんに使った食事でいつもいつも感謝の気持ちでいっぱいです!2018-1.JPG

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