JASVブログ第251回

 こんにちは、あかばね動物クリニックの水上です。

 高病原性鳥インフルエンザが世界中で拡大の様相を見せ、日本国内では野鳥だけではなく、家禽でも発生しています。ブログを書いている時点では青森と新潟のみですが、野鳥からは他県でも検出されています。そして秋田市の動物園や県内の東山動物園でも疑い事例の発生があり、戦々恐々としています。

養豚では今期に入ってからPEDの発生報告があります。初発生、沈静化から3年近く経過した農場では、ほとんどの母豚が更新されていると思います。それは、野外株に対する免疫がない状態、つまり再度PEDが発生した時には初発生時と同等の状況になる恐れがあります。

畜種関係なく、気を引き締め直し、冬に向けてバイオセキュリティを見直す必要があります。


 今回は豚のご先祖様のイノシシが関わる話になります。

 近年「ジビエ」という言葉を耳にする機会が増えてきていると思います。ジビエとは、狩猟によって得られた鳥獣肉のことを言います。狩猟の主な目的は、野生動物による農作物への被害を抑えるためです。野生動物は野菜や果物がおいしく実る時期をよく知っていて、収穫しようと思った矢先に被害に遭う、ということが多いようです。農作物への被害額としてはシカ、イノシシ、その他の動物たちと続きます。

ジビエは豚牛鳥のような一般家畜・家禽と違い、人が管理しているわけではありません。量が少ないため、貴重な資源と言い換えることができます。ではジビエは衛生的な精肉でしょうか?イノシシ等は常に屋外で活動し、いろいろな場所に行き来します。そうして様々な感染症に暴露されるため、屋内で飼われている家畜と比較して食中毒を引き起こす病原体を持っている可能性は高くなります。衛生的な管理下で使用されている豚でも生食はE型肝炎ウイルスに感染するリスクがあるため、十分加熱して喫食することが求められています。ジビエについてはさらに慎重を期する必要があります。

また通常豚は農場から屠畜場へ運搬され、小売店へと決まったルートがあります。ジビエに関しては、流通ルートは確立されていません。そのため厚生労働省から「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」が定められているので、それを遵守する必要があります。まだジビエの取り扱いについて日本は発展途上にあると言えます。

 今後ジビエは拡大していくでしょう。その時、皆が正しい知識を持ってジビエ料理を楽しめるような環境になるようにサポートができればと思います。

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JASVブログ第250回

 

 皆様こんにちは、イデアス・スワインクリニックの早川です。

去る1014日にメインテーマ「感染症の撲滅と制御」を掲げ、日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、一般社団法人日本養豚開業獣医師協会による合同集会が行われました。いわゆる「豚病3団体」と呼ばれるもので、今回で7回めを数えました。参加者数も毎回およそ250名あまりと安定した盛り上がりを見せています。

 この会は「豚病3団体」への所属の有無に関わらず、動衛研の研究者、家保の職員、民間の養豚獣医師、生産者、関連メーカーなど参加は誰でも可能です。特にPEDが流行したときの開催では、多くの生産者の方々にご参加を頂き、現場からの真剣・切実な思いを関係者一同共有することができたのは記憶に新しいことです。


この集会の企画は3団体それぞれが持ち回りで行っており、今年は日本豚病臨床研究会の番でした。ちょうど私は同研究会の幹事をやらせていただいており、初めて企画に参加させていただきました。会の盛り上がりを左右する一番重要なのはやはりテーマ決めです。今一番ホットな話題とは何か、様々な立場から意見交換をし、情報を共有すべきは何か・・・。頭を突き合わせて考える中で、ある先生が「疾病との距離の取り方って、どうなんでしょう」とポツリとおっしゃられたのがきっかけとなり、今回のメインテーマが決まりました。


病気はもちろん無くなった方がいいに決まっています。が、その方法は生産活動の長期的な展望に沿ったものでなくてはなりません。例えば口蹄疫のような対策を全ての疾病に対して取らなくてはならなかったら・・・とても養豚業は続けられません。疾病を起こす病原体にはそれぞれの特徴があり、その詳細を明らかにした上で初めて撲滅の成否を量り、戦略を立てることができるといえます。例えば、感染経路、宿主域、体内での免疫動態、環境中の生存性など様々です。また疾病は病原体だけで起こるものではありません。豚という生き物の特質、そして養豚という生産システムが抱える要因、全てが絡み合って疾病が発生します。疾病ごとの特徴を正確に理解し、どのように向かい合うことが養豚生産場最も大きな利益を生むのかを考えることが「疾病との距離感」という言葉に凝縮されていると思います。


そういうわけで、疾病の制御、撲滅を考えるうえで、学術的なアプローチと実践的なアプローチは切っても切れない関係にあると言えます。その意味で、豚病3団体発足の理念がいかに正当であるかを強く再認識させてくれる良いテーマになったと個人的には思いました。その理念とは、JASVホームページによると「APVS2009(アジア養豚獣医学会)における3団体、産官学の連携、そして大会成功の経験と成果を今後の養豚獣医療、養豚産業の発展につなげていきたいという思いを形にするもの」とあります。研究、行政、臨床、生産、製造、開発までをひとつなぎにするこの集まりに、今後も大きな意義と可能性を期待しつつ、自分もその一翼を担えるよう頑張らなくてはと感じています。まだ参加したことがないという方は、ぜひ一度足を運んでみてください。(「豚病3団体」は毎年10月開催予定です。)

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JASVブログ第249回

みなさんこんにちは!()サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!


「今年の夏は暑くなる」という予想が出ていましたが、関東では例年よりもむしろ涼しくなり、肩透かしを食らって終わりました。

一方で、九州では8月中に1回しか雨が降らない地域もあるなど、途方もない暑さに見舞われ、繁殖成績が低下した農場も多く見られました。

このように地域差はありましたが、どの地域でも早めに対策を講じた農場ではその影響を最小限に抑えることができました。

今年の夏をうまく乗り切れた農場もあれば、来年の反省材料を残した農場もあったと思いますが、皆さんの農場はどうだったでしょうか?


今後は冬の寒さ対策が重要になります。

豚舎内のカーテンや壁に穴は空いていないでしょうか? 穴から入ってきた冷たい空気が豚に当たると、寒冷ストレスが疾病の発生を助長します。

ウィンドレス豚舎の場合も豚舎内に穴が見られないようにするのは当然ですが、それに加えて換気設定も夏場の状態から冬仕様に変更しなければなりません。

また、豚舎内の湿度も下がって乾燥しやすくなるので、乾燥により肺炎が出やすくなります。加湿のための散水は豚舎内に設置した湿度計を参考に、出来るだけ1日に複数回行えると良いでしょう。

加湿のために細霧装置を使うのも良い方法です。その場合は細霧ノズルに詰まりがあると十分に加湿が出来ないばかりか、霧状に細霧が出ずに水が直線的に噴射され、豚が濡れてしまう危険があるので注意が必要です。

最後に、豚舎内温度が十分に保温できているか確認してみて下さい。特に豚を豚舎に入れる際の部屋が十分に温まっていない農場が良く見られるので、移動後の豚が寒がっていないかよく確認してみて下さい。

移動直後はそれ以前にいた豚舎温度よりも高い環境温度を必要とするのですが、豚を導入する前の豚舎は熱源(豚)が少なく、十分に温まっていないことが往々にしてあります。その状態のまま入舎すると、移動直後の食下量が急激に落ち、1日増体重の悪化、出荷日齢の延長等の影響が出る可能性が高まります。

豚で豚舎を温めるのではなく、豚舎が豚を温められるようにしましょう。


最後に、秋が深まる群馬で、今シーズン最後の事務所の芝刈りを行った時の写真を載せます。

豚が体調を崩しやすい季節ということで今回のお話をしましたが、農場に関わる皆様も風邪を召されることのないよう、十分にご自愛くださいませ。


()サミットベテリナリーサービス


渡部 佑悟

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JASVブログ第248回

こんにちは。サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。


寒暖の差が大きい時期となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?


私は今月タイで開催されたMSD Animal Health(㈱インターベット)主催の養豚臨床獣医師向けの繁殖研修Repro Trainingに参加させていただきました。


この研修では13か国(日本、中国、台湾、フィリピン、タイ、韓国、ベトナム、マレーシア、デンマーク、スペイン、スウェーデン、ドイツ、南アフリカ)から31名が参加しました。

研修は6日間行われ、最初の4日間は座学、後半2日間では大学と農場で実習が行われました。


この研修は繁殖分野に特化しており、繁殖障害、ホルモン剤の使い方、使うことによって得られる利益、再発を考える上での発生学、雄の取り扱い方、解剖実習など内容は多岐に渡りました。これまで疑問に思っていたことも、直接先生方に質問することが出来ました。


Dr. John Carrによるワークショップでは、分娩房を1つ空けるとどれだけ損しているかを算出したり、ある農場の繁殖成績を考察したり、発生学からの目線で再発について学ぶは、班ごとに考えながら行う大変内容の濃いものでした。

投資以上の利益を得ることを目的に据えて実施したワークショップでは、日本・韓国チームは「レギュメイト(別名:マトリックス。日本国内では未承認の合成プロジェステロン製剤)を候補豚に使うことによっていくらの利益を得ることができるのか農場主に説明」という題で考えました。


研修の後半で特に勉強になったのが雄の管理についてです。

私はAIセンターで研修した経験がありますが、研修後実際に農場巡回に行くようになってからは、雄の管理方法は農場によって様々であることを知り、多くの疑問を抱えていました。

精液の採取方法や希釈・観察方法について学び、講師を務めたDr. Gary Althouseにはほかにもいろいろなお話を伺うことが出来ました。


チュラルコーン大学での実習では屠場から入手した生殖器の観察を行いました。

これまでに卵胞や黄体など雌の生殖器は見たことがありましたが、尿道球腺をきって膠様物を出したりと、雄の生殖関係は初めて見たのでとても面白かったです。


また農場実習では、あて雄用に子豚の精巣上体尾のみをとることで将来射精できないようにする方法の練習も行いました。



研修へ行く前は大変緊張していましたが、とても実りある時間を過ごすことができました。

今後はこの研修を通し学んだことを現場で生かしたいと思います。

また、世界各国の養豚獣医師の方々とも知り合いになることができ、大変貴重な機会をいただきました。改めて御礼申し上げます。

(参加者全員での記念写真)

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JASVブログ第247回

 こんにちは、あかばね動物クリニックの水上です。


 リオデジャネイロオリンピックとパラリンピックが終わりましたね。日本人選手の活躍が連日報道され、映像を見たり結果を聞いたりするだけで、エネルギーを分けてもらいました。全てのスポーツで言えることですが、超人的な動きには目を見張ります。動きを真似しようものなら、まず翌日動けなくなりそうです。


 先の話ですが、4年後には日本で東京オリンピックが開催されます。多方面での準備が進んでおり、少しずつ実感がわいてきます。愛知県田原市でも競技の一つ、サーフィンを誘致しようと“のぼり”が立っています。

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オリンピックは“スポーツの祭典”ともいわれ、世界各国の一流の選手が一堂に集まります。そして、様々な宗教や文化圏の方々が一堂に会するため、近年のオリンピックでは食事についても十分な配慮がされています。そのため提供される食材については安全性+αが求められます。前回のロンドンオリンピックではイギリス独自のGAP(農業生産工程管理)であるレッドトラクターの認証が求められ、推奨ではありますがオーガニック認証も求められていました。リオではオーガニック認証や環境あるいは社会基準となる認定(例:地球環境保全に協力的だと認定される)を受けた食材、さらに地元産をできるだけ用いているようです。東京オリンピックでの具体的な基準はこれから決まっていくと思いますが、GAPや農場HACCPといった客観的に安全と言える生産方法が重要視されるのではないでしょうか。

オリンピックは、日本独自の食材や日本の本当の味を、オリンピック選手だけでなく各国のサポーター、布いては全世界に向けて伝えるまたとない機会になります。B-1グランプリとは規模が違いますが、提供された料理の中で評判になったものはその後の展開も楽しみです。

(個人的には愛知の味噌系料理が広まってほしいと思っています、味は濃いです)

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JASVブログ第246回

 JASVブログの読者の皆様こんにちは。イデアス・スワインクリニックの早川です。
お盆が明けたら急に秋らしくなってしまいました。スーパーには解凍ではない「生」サンマが新モノの価格でパックに仰々しく入って売られ始めましたし、田んぼでは連続して発生している台風の合間をぬって必死に稲刈り作業が行われています。そんな金色の圃場の合間には青々とした背丈の大きな稲の葉が茂っている圃場がだいぶ見受けられるようになりました。そう、飼料米の圃場です。収穫時期が異なるそうで、まだ穂らしきものが見えません。この時期に青々とした田んぼは一種異様で、初めはどっきりしてしまいました。これからはもっと、この時期に青く茂る田んぼが増えてくるのだろうなあと思って見ています。

 例年、稲刈りが始まる時期は、夏の続きのつもりで窓を開けっぱなしにして寝た朝に、のどがヒリヒリと痛むのが気になりだします。のどの弱い娘たちに至っては咳まで出てきます。この、毎年ある時期になると起こる家族ののどの異変に、稲刈りという農作業と関連があるのではと、この辺の湿度の変化と稲刈りの開始時期を調べたことがありました。旭市の稲刈りはお盆明け直後からですが、まさしくこの時期湿度が低下するのを発見し、豚の肺炎が秋口に増えるのも関係があるのだろうと一人で納得したことがあります。それくらい、この地域は田んぼが多いのです。
 空気中の湿度が周辺の田んぼの作業と連動しているのは、稲刈りの時期の乾燥だけではありません。逆のパターンが田植えの時期です。田んぼという田んぼに一斉に水が張られ、夜になるとカエルの大合唱が聞こえる時期、空気中の湿度は稲刈り時期の反対でぐっと上がります。まだ気温はあまり高くない時期ですが、実は湿度はしっかり変化していて、やはり豚の疾病も動きやすい時期と重なります。

 もともと初夏、秋口は大気の状態が冬から夏へ、夏から冬へと変化する時期ではあります。特に私のいる地域は海からの湿った南風、北からの(特に冬は)乾燥した北風にさらされ、気温と湿度の変化は季節によって大きな差があります。ある程度規模のある地方都市では、気象データのログが気象庁のウェブにアップされています。それに基づいていくつかの都市で季節ごとに温度、湿度の変化をグラフ化してみると、場所によってかなり特徴的なパターンが描き出されます。ちなみに、私の地元に一番近い銚子気象台のデータによりますと、この地域の温度・湿度の年間を通じた変化は両者が一緒に変化する傾向がどの地域よりも強く、また両者の最高値と最低値の落差も比較的大きいことがわかりました。千葉県北東部というと一見温暖な地域ですが、実は空気の質の変化には十分な注意が必要で、スマートフォンやインターネットを利用した温度・湿度・風向きの予測をリアルタイムで頭に入れながら管理することの重要性を感じています。

 このように、自分の農場が存在する地域の気象的特徴に加えて、周辺状況(田んぼが多いところなら田植え・稲刈りの時期など)の通年のパターンを頭に入れておくと、疾病の動きに先回りして対策できてくる気がします。とはいえ、いつ発生するかわからない台風やゲリラ豪雨など、どんな経験則も塵の如く吹き飛ばしてくれるのが自然ではあります。今年はすでに台風9号の直撃を我が農場もくらい、2棟ほど青空豚舎になってしまいました。もうこれ以上は荒ぶる神が上空を通りませんようにと祈るばかりです・・・。



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JASVブログ第245回

皆さまこんにちは。

㈱バリューファーム・コンサルティングの大久保光晴です。

お盆も過ぎ、暑さも和らぐかと思いきや、気象庁の季節予報によるとまだまだ暑い日が続きそうです。暑さ寒さも彼岸までとも言いますが、皆さんくれぐれもご自愛ください。


今回は水について話したいと思います。豚の管理では餌・水・空気(環境)をしっかり豚に提供しなければいけません。皆さんご存知とは思いますが、水は動物にとって不可欠で、栄養失調症よりも脱水症の方がより致命的です。

皆さんの農場では、給水器の水量の目標はどのくらいでしょうか。

30kgまでの豚では600~700ml/分、肥育豚や母豚では1ℓ/分が最低限必要と考えていますが、離乳直後の子豚ではさらに給水皿を設け、1日に数回の給水を実施している農場もあります。

離乳直後の子豚では、体内の水分割合が高く水の要求量が多いので、殆んどの場合、離乳舎に移動しますから、母豚もいない新しい環境での給水は特に重要です。

体内の水分量は、生時直後では約80%、その後成長ともに60%程度に落ち着いてきます(出荷豚の体内水分については諸説あり)。


また給水器の管理をするに当たっては、水圧も重要です。

ところで現在、日本付近に3つの台風がありますが、990ヘクトパスカル(hPa)前後の中心気圧です。豚舎に設置している水圧計の単位は、大抵メガパスカル(MPa)と思いますが、共に圧力の単位であり、1MPa=1000hPa=1,000,000Paとなります。

0.1~0.15MPaの水圧をお勧めしていますが、現場ではそれ以上のことが良くあります。

では、例えば0.1MPaってどんなもの?と言いますと、10mの高さから1cm四方の床に1kgの水を落した力で、実はかなり強い力です。


水の管理は非常に重要で、今回は給水器について触れました。

この機会に皆さんの現場でも今一度、水に関する確認をしてみては如何でしょうか。

posted by JASV at 01:09Comment(0)日記