JASVブログ第254回

㈱バリューファーム・コンサルティングの大久保光晴です。

関東含め多くの地域が67日に梅雨入りしましたが、雨はあまり降っておらず、真夏の水不足が心配です。


最近、加計学園の獣医学部新設問題の影響で、各種メディアで獣医師と言う言葉を良く耳にするようになりました。卒業後に獣医師国家試験を受ける資格が得られる獣医学部や獣医学科を設置している大学は、国公立大学は11大学、私立大学は5大学の計16大学あり、毎年約1,000人の獣医師が誕生しています。ちなみに医師は毎年約8,000人、薬剤師は毎年約9,00010,000が誕生しています。では、獣医師の数は少ないのでしょうか。


獣医師には2年に1回、就業状況について農林水産省(農林水産大臣)へ届け出る義務があり、その情報を元に統計をまとめ、今後の動向分析・対策を立てるのに活かされています(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyui/index.html)。

平成26年の調査では、全体の獣医師数は39,098人、その内で獣医事に従事する人の総数は34,548人となっています。

さらにその内訳をみると、国・都道府県・市区町村の職員を含む公務員は9,526人、農業共済・製薬会社・飼料会社・大学などを含む民間団体職員は7,623人、個人診療に関わる人は17,241人います(その他は158人)。加えて個人診療のうち、犬猫に関わる人は15,205人、我々を含む産業動物に関わる人は1,896人です。

ここで犬猫と産業動物に関わる人の平均年齢を見ていると、犬猫は46.2歳、産業動物は59.3歳です(上記のURL内でダウンロードできるデータについて、全国集計と都道府県別集計の産業動物獣医師の小計に約200人の差がある理由は不明)。ところで、大学卒業後の進路を見てみると、犬猫を含む小動物臨床に進む人は約4050%います。


ここからはそれぞれの意見が分かれると思いますが、私は卒業後の進路が偏っているために、分野によって人手不足・過剰が起こっていると考えています。また、平成26年の厚生労働省の全国の届け出医師数は約311,000人で、獣医師の毎年の供給割合の方が多いです。

産業動物獣医療はますます重要な分野になっていくと思いますが、今後も人手不足は続くと考えています。まだこの分野を知らない獣医師の方、学生の方がいらっしゃいましたら、是非興味をもっていただき、一度見ていただければと思います。


添付資料:農林水産省による平成19年5月獣医師の需給に関する検討会報告書より抜粋

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JASVブログ第253回

こんにちは。サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。


今年は気温が上がるのが早く、すでに真夏のように日差しの強い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?


2017年も半分が過ぎようとしていますが、私は3月に初めてJASV年次大会という大舞台で発表させていただく機会があり、「ベンチマーキングからみた多産系母豚を導入した農場の生産成績の傾向」という内容で発表致しました!


一部ではありますが、発表内容を紹介させてください。


近年、多産系母豚の導入が増加傾向にあり、高い産子数を達成するものの、1腹当たりの生存産子数の多い農場ほど哺乳中事故率が高い傾向があることが明らかになっています。


多産系母豚を導入しているA農場の事例では、分割授乳の実施、子豚の保温の徹底、生時体重を増やしたこと、母豚の飼育環境を改善したことにより、哺乳中事故率に改善が認められました。

多産系母豚は産子数の多いことが特徴かつ利点でありますが、多く生まれた子豚を哺乳中に死亡させないため、これらの基本管理の見直しが有効であると考えられました。



今回、データを分析する中で改めてベンチマーキングの重要性を感じました。自農場の成績を継続的に記録することで、対策実施後の成績改善を数値から明らかにすることができます。

また、ベンチマーキングに参加することで、他農場の成績と比較・分析が可能になります。


5月にはJASVベンチマーキングセミナーが東京で開催され、5つの生産指標の上位3位の農場が発表されました。

表彰農場の中から、実際に取り組んでいることが紹介され、参加者の皆さんからも多くの質問が飛び交い、私も勉強になるセミナーとなりました。


私自身もデータ収集の作業に携わらせていただいていますが、年々ベンチマーキングに参加される農場が増えてきています。ご興味ある方は、JASV事務局(TEL046-290-5630 MAIL: pig.jasv●r7.dion.ne.jp(●を@に変えてください))までお問い合わせください!



※今月、石川先生が還暦をむかえられ、みんなでお祝いパーティをしました!

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JASVブログ第252回

こんにちは。サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。


2017年がスタートして早2カ月が過ぎようとしています。

ご挨拶が遅くなってしまいすみません!皆様、本年もどうぞよろしくお願い致します!


さて、昨年末1221日に麻布大学で記念すべき第10回のPCC症例検討会が開催されました。今回は5名のJASVの先生方の他に、農研機構動物衛生研究部門の川嶌健司先生が特別講演をしてくださいました。


PCCPorcine Clinic Center(豚クリニックセンター)の略であり、JASVでは臨床現場から麻布大学PCCに検体を送り、病理検査・PCR検査・寄生虫学的検査により疾病診断を行っていただいています。


今回、弊社からは石関先生と渡部先生が発表しました。事前に麻布大学を訪問し、獣医学部病理学研究室の代田欣二先生より検体の病理組織所見についてご指導いただきました。私は麻布大学を卒業しているため、代田先生と一緒に顕微鏡をのぞき、ご指導いただくことができて、学生に戻ったような気持ちになりました。


弊社から発表した症例については、私が石関先生、渡部先生と一緒に農場に行った際に採材した検体でした。豚の症状を見て、剖検を行い、病原体検査、病理組織所見から診断するという一連の流れを最後まで追うことができ大変良い経験になりました。改めて、総合的に判断することの重要性を学ぶことができました。


症例検討会の詳細についてはレポートを作成していますので、ぜひチェックしてみて下さい!

以下リンクです。

http://www.e-jasv.com/info/info-44.html

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群馬は雪が降り寒い毎日です。どうぞ皆様も体調を崩されないようにお過ごしください。

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JASVブログ第251回

 こんにちは、あかばね動物クリニックの水上です。

 高病原性鳥インフルエンザが世界中で拡大の様相を見せ、日本国内では野鳥だけではなく、家禽でも発生しています。ブログを書いている時点では青森と新潟のみですが、野鳥からは他県でも検出されています。そして秋田市の動物園や県内の東山動物園でも疑い事例の発生があり、戦々恐々としています。

養豚では今期に入ってからPEDの発生報告があります。初発生、沈静化から3年近く経過した農場では、ほとんどの母豚が更新されていると思います。それは、野外株に対する免疫がない状態、つまり再度PEDが発生した時には初発生時と同等の状況になる恐れがあります。

畜種関係なく、気を引き締め直し、冬に向けてバイオセキュリティを見直す必要があります。


 今回は豚のご先祖様のイノシシが関わる話になります。

 近年「ジビエ」という言葉を耳にする機会が増えてきていると思います。ジビエとは、狩猟によって得られた鳥獣肉のことを言います。狩猟の主な目的は、野生動物による農作物への被害を抑えるためです。野生動物は野菜や果物がおいしく実る時期をよく知っていて、収穫しようと思った矢先に被害に遭う、ということが多いようです。農作物への被害額としてはシカ、イノシシ、その他の動物たちと続きます。

ジビエは豚牛鳥のような一般家畜・家禽と違い、人が管理しているわけではありません。量が少ないため、貴重な資源と言い換えることができます。ではジビエは衛生的な精肉でしょうか?イノシシ等は常に屋外で活動し、いろいろな場所に行き来します。そうして様々な感染症に暴露されるため、屋内で飼われている家畜と比較して食中毒を引き起こす病原体を持っている可能性は高くなります。衛生的な管理下で使用されている豚でも生食はE型肝炎ウイルスに感染するリスクがあるため、十分加熱して喫食することが求められています。ジビエについてはさらに慎重を期する必要があります。

また通常豚は農場から屠畜場へ運搬され、小売店へと決まったルートがあります。ジビエに関しては、流通ルートは確立されていません。そのため厚生労働省から「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」が定められているので、それを遵守する必要があります。まだジビエの取り扱いについて日本は発展途上にあると言えます。

 今後ジビエは拡大していくでしょう。その時、皆が正しい知識を持ってジビエ料理を楽しめるような環境になるようにサポートができればと思います。

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JASVブログ第250回

 

 皆様こんにちは、イデアス・スワインクリニックの早川です。

去る1014日にメインテーマ「感染症の撲滅と制御」を掲げ、日本豚病研究会、日本豚病臨床研究会、一般社団法人日本養豚開業獣医師協会による合同集会が行われました。いわゆる「豚病3団体」と呼ばれるもので、今回で7回めを数えました。参加者数も毎回およそ250名あまりと安定した盛り上がりを見せています。

 この会は「豚病3団体」への所属の有無に関わらず、動衛研の研究者、家保の職員、民間の養豚獣医師、生産者、関連メーカーなど参加は誰でも可能です。特にPEDが流行したときの開催では、多くの生産者の方々にご参加を頂き、現場からの真剣・切実な思いを関係者一同共有することができたのは記憶に新しいことです。


この集会の企画は3団体それぞれが持ち回りで行っており、今年は日本豚病臨床研究会の番でした。ちょうど私は同研究会の幹事をやらせていただいており、初めて企画に参加させていただきました。会の盛り上がりを左右する一番重要なのはやはりテーマ決めです。今一番ホットな話題とは何か、様々な立場から意見交換をし、情報を共有すべきは何か・・・。頭を突き合わせて考える中で、ある先生が「疾病との距離の取り方って、どうなんでしょう」とポツリとおっしゃられたのがきっかけとなり、今回のメインテーマが決まりました。


病気はもちろん無くなった方がいいに決まっています。が、その方法は生産活動の長期的な展望に沿ったものでなくてはなりません。例えば口蹄疫のような対策を全ての疾病に対して取らなくてはならなかったら・・・とても養豚業は続けられません。疾病を起こす病原体にはそれぞれの特徴があり、その詳細を明らかにした上で初めて撲滅の成否を量り、戦略を立てることができるといえます。例えば、感染経路、宿主域、体内での免疫動態、環境中の生存性など様々です。また疾病は病原体だけで起こるものではありません。豚という生き物の特質、そして養豚という生産システムが抱える要因、全てが絡み合って疾病が発生します。疾病ごとの特徴を正確に理解し、どのように向かい合うことが養豚生産場最も大きな利益を生むのかを考えることが「疾病との距離感」という言葉に凝縮されていると思います。


そういうわけで、疾病の制御、撲滅を考えるうえで、学術的なアプローチと実践的なアプローチは切っても切れない関係にあると言えます。その意味で、豚病3団体発足の理念がいかに正当であるかを強く再認識させてくれる良いテーマになったと個人的には思いました。その理念とは、JASVホームページによると「APVS2009(アジア養豚獣医学会)における3団体、産官学の連携、そして大会成功の経験と成果を今後の養豚獣医療、養豚産業の発展につなげていきたいという思いを形にするもの」とあります。研究、行政、臨床、生産、製造、開発までをひとつなぎにするこの集まりに、今後も大きな意義と可能性を期待しつつ、自分もその一翼を担えるよう頑張らなくてはと感じています。まだ参加したことがないという方は、ぜひ一度足を運んでみてください。(「豚病3団体」は毎年10月開催予定です。)

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JASVブログ第249回

みなさんこんにちは!()サミットベテリナリーサービスの渡部 佑悟です!


「今年の夏は暑くなる」という予想が出ていましたが、関東では例年よりもむしろ涼しくなり、肩透かしを食らって終わりました。

一方で、九州では8月中に1回しか雨が降らない地域もあるなど、途方もない暑さに見舞われ、繁殖成績が低下した農場も多く見られました。

このように地域差はありましたが、どの地域でも早めに対策を講じた農場ではその影響を最小限に抑えることができました。

今年の夏をうまく乗り切れた農場もあれば、来年の反省材料を残した農場もあったと思いますが、皆さんの農場はどうだったでしょうか?


今後は冬の寒さ対策が重要になります。

豚舎内のカーテンや壁に穴は空いていないでしょうか? 穴から入ってきた冷たい空気が豚に当たると、寒冷ストレスが疾病の発生を助長します。

ウィンドレス豚舎の場合も豚舎内に穴が見られないようにするのは当然ですが、それに加えて換気設定も夏場の状態から冬仕様に変更しなければなりません。

また、豚舎内の湿度も下がって乾燥しやすくなるので、乾燥により肺炎が出やすくなります。加湿のための散水は豚舎内に設置した湿度計を参考に、出来るだけ1日に複数回行えると良いでしょう。

加湿のために細霧装置を使うのも良い方法です。その場合は細霧ノズルに詰まりがあると十分に加湿が出来ないばかりか、霧状に細霧が出ずに水が直線的に噴射され、豚が濡れてしまう危険があるので注意が必要です。

最後に、豚舎内温度が十分に保温できているか確認してみて下さい。特に豚を豚舎に入れる際の部屋が十分に温まっていない農場が良く見られるので、移動後の豚が寒がっていないかよく確認してみて下さい。

移動直後はそれ以前にいた豚舎温度よりも高い環境温度を必要とするのですが、豚を導入する前の豚舎は熱源(豚)が少なく、十分に温まっていないことが往々にしてあります。その状態のまま入舎すると、移動直後の食下量が急激に落ち、1日増体重の悪化、出荷日齢の延長等の影響が出る可能性が高まります。

豚で豚舎を温めるのではなく、豚舎が豚を温められるようにしましょう。


最後に、秋が深まる群馬で、今シーズン最後の事務所の芝刈りを行った時の写真を載せます。

豚が体調を崩しやすい季節ということで今回のお話をしましたが、農場に関わる皆様も風邪を召されることのないよう、十分にご自愛くださいませ。


()サミットベテリナリーサービス


渡部 佑悟

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JASVブログ第248回

こんにちは。サミットベテリナリーサービスの数野由布子です。


寒暖の差が大きい時期となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?


私は今月タイで開催されたMSD Animal Health(㈱インターベット)主催の養豚臨床獣医師向けの繁殖研修Repro Trainingに参加させていただきました。


この研修では13か国(日本、中国、台湾、フィリピン、タイ、韓国、ベトナム、マレーシア、デンマーク、スペイン、スウェーデン、ドイツ、南アフリカ)から31名が参加しました。

研修は6日間行われ、最初の4日間は座学、後半2日間では大学と農場で実習が行われました。


この研修は繁殖分野に特化しており、繁殖障害、ホルモン剤の使い方、使うことによって得られる利益、再発を考える上での発生学、雄の取り扱い方、解剖実習など内容は多岐に渡りました。これまで疑問に思っていたことも、直接先生方に質問することが出来ました。


Dr. John Carrによるワークショップでは、分娩房を1つ空けるとどれだけ損しているかを算出したり、ある農場の繁殖成績を考察したり、発生学からの目線で再発について学ぶは、班ごとに考えながら行う大変内容の濃いものでした。

投資以上の利益を得ることを目的に据えて実施したワークショップでは、日本・韓国チームは「レギュメイト(別名:マトリックス。日本国内では未承認の合成プロジェステロン製剤)を候補豚に使うことによっていくらの利益を得ることができるのか農場主に説明」という題で考えました。


研修の後半で特に勉強になったのが雄の管理についてです。

私はAIセンターで研修した経験がありますが、研修後実際に農場巡回に行くようになってからは、雄の管理方法は農場によって様々であることを知り、多くの疑問を抱えていました。

精液の採取方法や希釈・観察方法について学び、講師を務めたDr. Gary Althouseにはほかにもいろいろなお話を伺うことが出来ました。


チュラルコーン大学での実習では屠場から入手した生殖器の観察を行いました。

これまでに卵胞や黄体など雌の生殖器は見たことがありましたが、尿道球腺をきって膠様物を出したりと、雄の生殖関係は初めて見たのでとても面白かったです。


また農場実習では、あて雄用に子豚の精巣上体尾のみをとることで将来射精できないようにする方法の練習も行いました。



研修へ行く前は大変緊張していましたが、とても実りある時間を過ごすことができました。

今後はこの研修を通し学んだことを現場で生かしたいと思います。

また、世界各国の養豚獣医師の方々とも知り合いになることができ、大変貴重な機会をいただきました。改めて御礼申し上げます。

(参加者全員での記念写真)

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posted by JASV at 23:44Comment(0)日記